本を抱く文学少女は勧誘する
文学少女シリーズのようになってきました、第二弾目。
今回出てくる少年が気弱くんなので、前回に比べるとシリアスな雰囲気ではなく、どちらかといえばギャグ要素が強めです。
今回で怪異だと主張できました。
「嫌だぁぁ!」
そう喚きながら走る少年がいた。涙を流し、鼻水を垂らし、よれよれになりながら走り続けていた。
「ハッ、ハッ」
息を切らしながらも、彼は何者かから逃げる。
「くそぅ! 逃げきれないいいッ!」
息が苦しい。
体が重い。
足も重たい。
鉛のような足は次第に上がらなくなり、そして自らの左足に引っかかった。ズサッと派手にこける少年。
「痛い、痛いよぅ。俺が何をしたって言うんだよぅ」
気弱な声で、涙をぼろぼろと流す。
そのすぐ後ろに、音もなく近寄る少女。その手には赤い栞を挟んだ本を持っていた。
「逃げるなんて〝らしくない〟わね」
「はあ⁉︎ 怪異にそんな事言われたくないね!」
「祓い屋さんとしてのプライドはないのかしら」
「俺、まだ祓い屋なんて継いでないもんね!」
「……まだ迷ってるの?」
呆れた眼差しを向けられた少年は押し黙る。
「いくらこの栞で時を止めてるからって、いつまでも逃げられないわよ?」
「俺が家業を継がなければ家族が死ぬって、どう考えてもおかしいだろ⁉︎」
「継げばいいじゃない」
「祓われる側の怪異がそんな事言っちゃダメでしょ! 敵を増やすようなもんでしょ⁉︎」
「私は貴方を敵だと認識してないから問題ないわ」
黒髪の少年は頭の中を整理するように呟き始めた。
「俺が祓い屋になれば家族は生きる……」
「ほら、選んで頂戴。選択肢は一つでしょう?」
「何で……」
「?」
俯く彼の言葉が聞き取れず、少女は首を傾げる。彼は爆発したように顔を上げた。
「俺なんかより弟の方が出来がいいじゃん⁉︎ 何で俺なの⁉︎ 俺なんて——」
「自分を卑下するのはやめなさい」
碧眼の視線が鋭くなる。彼女は本を開き、その文章を目で追いながら口を開いた。
「祓い屋としての才は〝全くない〟かもしれない」
傷口に塩を塗るなよと少年は泣きながら呟く。
「でも貴方は筆を持てるでしょ?」
「…………筆?」
予想を上回る言葉に固まる少年。
「そう。その筆で、感受性豊かな性格を生かしなさいと言ってるのよ」
「馬鹿じゃないの⁉︎ そろって要は俺じゃなくていいってことでしょ⁉︎」
「そうともいえるかしら」
少女は本を彼の目前に差し出す。飛び出た赤い栞を引き抜けと言わんばかりに。
「さあ、選びなさい」
少年は暫く悩んだ後、彼女の目と合わせないように、恐る恐る栞を引き抜いた。
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