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安全な場所

「ヒルダ、ちょっと匿ってくれないか」


 ネルソンは倉庫の中に飛び込むと、そこにいたヒルダに懇願した。


「あら、ネルソンさん。どうしたんです?」


 驚きつつも、ヒルダは近くにあった布でネルソンの体を覆った。間一髪、倉庫の扉が開いて、ヒーローたちが雪崩れ込んでくる。


「ここにはいないぞ!」


 倉庫内をぐるりと見回したセシルが大声を上げた。「次!」というロビンの掛け声と共に、四人は去っていく。


「助かったよ、ありがとう」


 足音が遠ざかっていくのを聞きながら、ネルソンは布の中から這い出た。


「逃げてきたんですね?」

 ヒルダは納得したように頷く。


「よくそんな事ができましたね」

「運が良かったんだ」

 

 ネルソンは届け物をするために女子修道院に来ていたのだが、ちょうど馬小屋の方で、何かトラブルがあったらしい。厩舎から逃げ出してきた馬たちが、敷地内を縦横無尽に駆け回るのにヒーローたちが気を取られている隙に、こっそりと彼らの元を離れたのである。


 もちろん、やましい事をしようと考えていた訳ではない。ただ、少しでいいから彼らの監視外に置かれたかっただけなのだ。


 しかし、ネルソンが完全に逃げ切る前に、ヒーローたちは容疑者が逃亡しようとしている事に気が付いてしまった。その結果、こうして追われる身となったのだ。


 彼らをやり過ごすには一旦どこかに隠れるしかないと判断し、そう言えば今日はヒルダが倉庫で何か作業をする予定だったような気がするというおぼろげな記憶を頼って、ここまで来たのである。


「噂では聞いていましたけれど、監視されているって本当だったんですね」

 ヒルダが気の毒そうに言った。


「迷惑な話ですね。やってもいない事でこんな疑いを掛けられるなんて」

「まったくだ」


 どうやら、ヒルダはネルソンが潔白だと信じてくれているらしい。日々ヒーローたちから白眼視されてきたネルソンとしては、味方がいると分かって救われた思いだった。

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