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藍の鎖に縛られた人

(でも、もし私が監視をやめさせる事に成功したら、少しはネルソンさんも私の事を許す気になってくれるんじゃないかしら?)


 だとするならば、それは仲直りをする絶好のチャンスになるではないか。この機会を利用しない手はない。


 下心を携えたドローレスが向かったのは、クレアの所だった。ハーレムメンバーたちは、ネルソンへの疑いで凝り固まってしまっている。その考えを変えるには、彼らの敬愛するクレアの一喝が何より効くだろうと判断したのだ。


「ちょっと」


 談話室でまったりと編み物をしていたクレアに、ドローレスは声を掛けた。


「あら、ドローレスさん」


 こちらに気が付き、クレアはにこやかな顔で編み棒を置いた。一瞬、彼女が作っていたボロ雑巾にしか見えない作品にドローレスは気を取られかけたが、「どうしました?」という声に我に返る。


「あなたのハーレムの子たちが、ネルソンさんを追い回しているわ。何とかしてちょうだい。ネルソンさん、絶対に迷惑に思っているわよ」

「ああ、その事ですか。私もあんな事はやめてほしいのですが……」

 クレアは困ったような顔になる。


「でも、皆さん、こうするのが私のためだと言って聞かないんです。あんな疑いをかけられて、ネルソンさん可哀想……」

「誰のせいだと思ってるのよ!?」


 他人事のように言ってのけたクレアに、ドローレスはつい逆上してしまった。


「全部あなたのせいでしょう? あなたがあんなつまらない事で騒いだりするから、ネルソンさんがこんな目に遭っているのよ? 分からないの!?」


 頭に血が上ったドローレスは、クレアの肩を強く揺さぶった。クレアは、「きゃっ」と悲鳴を上げる。


「何が聖女よ! ネルソンさんを不幸にしているのはあなたじゃない!」

「それは違います!」


 それまで怯えた目でドローレスの罵倒を聞いていたクレアが、その言葉を聞いた瞬間に、大いに気分を害したような顔になって憤然と立ち上がった。そのあまりの勢いに、ドローレスは突き飛ばされそうになる。


「青藍の聖女の傍にいて、不幸が起こる訳がないじゃないですか! ネルソンさんがこんな事になっているのは、あなたのせいに違いありません!」

「な、何ですって?」


 クレアは、ネルソンが不運な目に遭っているのはドローレスのせいだと言い出した。まさかの責任転嫁にドローレスはたじろぐ。


「ドローレスさん。早くネルソンさんを解放してあげてください」


 クレアは毅然として言い放った。まるで、罪人ざいにんの罪を読み上げる裁判官のような口調だ。


「あなたは青嵐の鬼女。悲しい事に、あなたでは皆を不幸せにする事しか出来ません。もちろん、その『皆』の中には、ネルソンさんも含まれています。でも、そんなあなたが唯一人々の幸せのために貢献できる事――それが、ネルソンさんを手放す事なんです」


 クレアがドローレスの手を握ってきた。そのあまりに強い力と燦然さんぜんとした目の輝きに、ドローレスは息を呑む。


「ネルソンさんは特別な人なんです。私とネルソンさんが結ばれれば、私の聖女の力は強くなる。幸せを届けられる人が増えるんです」


 クレアは興奮してまくし立てる。


「それに、私は聖女。私なら、ネルソンさんをあんな目に遭わせる事は決してありません。私といれば、彼は幸せになれる。それって、とても素敵な事です」


 今度は、クレアがドローレスの肩を掴む番だった。彼女の指が肌に食い込む感触に、ドローレスは鳥肌を立てる。


「ですから、ドローレスさん。もうネルソンさんと離れる決意をしてくれませんか? このままだと、彼には更なる困難が降りかかりますよ」

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[一言] 「ネルソンさんは特別な人なんです。私とネルソンさんが結ばれれば、私の聖女の力は強くなる。幸せを届けられる人が増えるんです」 ネルソンのことが好きだから、じゃない以上、どうしてもクレアは好き…
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