魔性の魅力は
ネルソンとヒーローたちの間に険悪な雰囲気が漂い始める。それを察してか、クレアが「もうやめてください」と言った。
「私のために喧嘩しないで。私にとっては、ネルソンさんも大切な将来のハーレムの一員なのですから」
クレアになだめすかされて、何とか一触即発の事態は回避できた。だが、ヒーローたちのネルソンに対する嫌悪が消えた訳ではないらしい。
こんな事をして後悔するぞ、と言わんばかりの視線を残し、彼らはクレアに急かされて、一足先に去っていった。
「ネルソンさん、私はネルソンさんを信じていますからね」
ヒーローたちがいなくなった後、クレアはネルソンの手を握ってきた。
「ああ、それはどうも」
ネルソンは彼女の手を振り払い、気の無い返事をした。
周囲の修道者たちの視線が痛い。きっと、クレアにウサギの死体を送り付けた犯人だと疑われていた時のドローレスも、こんな気持ちだったのだろう。
ふと、ネルソンはある事に気が付く。あのウサギは、結局誰がやったのか分からずじまいのままだ。クレアの部屋に執拗に投げ込まれる不可解なものたち。もしかしたら、あのウサギと今回の藁人形は、同一犯の仕業なのではないだろうか。
だが、そう思ってみたところで、ネルソンはクレアのためにわざわざ犯人を探し出してやろうなんて思わなかった。それどころか、少し愉快な気にさえなってくる。少なくともどこかには、クレアに呪いのアイテムを送り付ける程に、彼女の存在を疎ましく思っている人物がいるのだ。
聖女の魅力は魔性だが、その力は万能ではない。その事の証明者が増えたような気分だった。
「でも、私、怖いです、ネルソンさん」
クレアが懲りずに、その細腕でネルソンに絡みついてくる。
「誰かが私の事を呪おうとしているんですよね? ねえ、ネルソンさん……。私の事、守ってくれますよね?」
か弱い声で囁いてくる。だが、ネルソンは心を動かされない。好感度ゲージなんか見るまでもなく、自分の心が静まり切っているとネルソンには分かっていた。




