それの正体
朝食時の事だった。あの決意以来ずっと話を切り出すタイミングを窺っていたネルソンは、ドローレスが珍しく食堂へと入っていくのを目撃して、その後をつけていた。
しかし、ドローレスは入ってから数秒と経たない内に、さっさと食堂を出て行こうとした。きっと、端の方にクレアの姿を認めたからだろう。ネルソンもそれに従おうとした。
「これ、何なのでしょうか?」
だが、ネルソンはふとその足を止めた。聞こえてきたクレアの声が、どこか妙だったのだ。
クレアは何かを手にしていた。それは、彼女の拳二つ分くらいの大きさの、何とも奇妙な物体だった。あえて形容するなら、藁か干し草で出来た人形のようだ。その先端から、鈍く光る金色の糸みたいなものが刷毛先のように伸びている。
「朝起きたら私の部屋にあったんです。多分、昨日の夜、私が寝ている間に届けられたんだと思うんですけど。でも、送り主は書いていなくて……」
クレアは困惑しているようだった。周囲の修道者やハーレムメンバーたちも、首を捻っている。
その正体が分かったのは、それからしばらくしての事だった。いつも通りにネルソンを攻略しようと、クレアがヒーローたちを引き連れて男子修道院を訪問していた際に、大慌てのセシルが飛んできたのだ。
セシルはクレアのハーレムメンバーとしていつも他の攻略対象と一緒に愛しの聖女の傍にいるのに、今日に限っては彼女のもとを離れていたようだった。そのただならぬ様子に、一体何があったのかとネルソンは畑の草取りをしていた手を一旦止めた。
「クレア! あの人形の正体、分かったぞ!」
セシルのあまりの声量に、周囲にいた修道者たちがこちらに注目し始めた。
「これを見ろ!」
セシルは、恐らく書庫から持ってきたであろうかなり古い本のページをもどかしげにめくった。ネルソンは、その本のタイトルが『世界の呪い大全』となっている事に気が付く。
セシルはやがて目的のページに行き着いた。クレアたちがそこを覗き込む。そのページには挿絵もついていて、それは、クレアの元に送られてきた人形に近いものが、釘で木の幹に固定されているというものだった。セシルが内容を音読する。
「とおい**の**国では、この**な呪術が存在*る。わらで人形を**り、そこに*****のかみを付着させる。**に人形******れば、呪*は**する。これを**の国の*たちは、*****と*び――」
所々虫食いやインクの掠れがあり、全文を正確に読み取る事は出来なかった。だが、大よその検討をつける事は可能だ。セシルが険しい顔になる。
「つまり、あの人形は、呪いに使われるアイテムだったという事だ」
セシルははっきりと言い切った。それを聞いた途端、周りにいた修道者たちがざわめく。




