妨害
「ド、ドローレスさん……」
「聞こえなかった? 藁を取って」
ドローレスは硬い表情でネルソンに命令を下す。ネルソンがそれに従うと、ドローレスはあっと言う間に去っていった。そのあまりの勢いに、近くでぬいぐるみの材料の補充をしていたアダルバートが、何事だろうという顔で彼女の方に目を遣った。
「ドローレスさん、何だか機嫌が悪いな……」
ネルソンは横目でドローレスの様子を観察した。
すでに自分の席に戻っていたドローレスは、先程の藁でクマの人形に被せる帽子を器用に編んでいる。もちろん、赤い縞模様が可愛らしいベストを着たその人形も、ドローレスのお手製だ。彼女は裁縫が得意なのである。
あの放火事件でドローレスがヒルダを犯人扱いする言葉を吐いた日から、二人の仲はどこかぎこちないものになっていた。事件が解決して、ヒルダの無実が証明されても、それは変わらない。
あの時、ドローレスがヒルダを疑った事で、確かにネルソンは腹を立てた。だが、だからと言ってドローレスの事が嫌いになってしまった訳ではなかった。幼い頃から抱いていた恋心は、この程度の事で消えたりしないのだ。
いい加減で仲直りがしたかった。ドローレスと接する機会が全くなくなってしまって、ネルソンは寂しさを覚えるようになっていたのである。
「ヒルダ……どうしてドローレスさんは、まだあんなにそっけない態度をとっているんだと思う?」
「それはもちろん、自分の非を認めたくないからですわ」
ネルソンが尋ねると、ヒルダは当たり前のように言った。
「意地を張っているのでしょう。ご自分の過ちを認められないのですわ」
「僕から謝ったほうがいいのかな?」
ネルソンがソワソワしながら言うと、ヒルダは、「ご冗談を!」と目を剥いた。
「そういうのは……何と申し上げますか、よろしくないですわ! だってネルソンさんは、何も悪い事はしていないんですもの。向こうから謝ってくるのを待たないと、お互いのためにもよくありませんわよ」
ヒルダはコホンと咳払いを一つして、上目遣いでネルソンを見上げた。
「ネルソンさん……わたくしを庇ってくださって、ありがとうございます」
「気にしないでくれ。友だちなんだから」
ネルソンが軽く手を振った。
そんな頼れる友人に謝るのはよした方がいい、と言われてしまえば、そういうものかなという気にもなってくる。どうやらドローレスとの関係修復は、もう少し先になりそうだ。
ネルソンがそんな事を考えていると、何やら言い争う声が聞こえてきた。ふと見てみると、いつの間に裁縫室へやって来たのか、ヒーローたちを引きつれたクレアが、ドローレスと諍いを起こしている真っ最中であった。
「また懲りずにネルソンさんに会いに来た訳ね」
ドローレスは嫌味たっぷりに言い放った。
「でも無駄よ。ネルソンさんはね、大事なご親友の相手で忙しいの。あなたが行ったって、相手にされないわ」
「そんな事……あら、ネルソンさん!」
ネルソンがこちらの様子を眺めているのを目聡く見つけて、クレアの顔が上気した。




