罰が下ったのは
「ヘンリエッテ。あなたは罪人です。それも、己の罪を悔い改める気もまるでないとは言語道断。あなたのような者をこれ以上ここに置いておく訳にはいきません」
「大修道院長様、私は……」
「だまらっしゃい! 言い訳など聞きたくありません!」
モリスは怒声を飛ばした。そのあまりに厳格な口調に、ヘンリエッテだけでなく皆がひるむ。
「鬼女様は神が我々に与えた試練です! そんな事も分からないのですか! この蒙昧な痴れ者が!」
モリスはつかつかとドアに歩み寄り、乱暴に開けた。
「出て行きなさい! ここにあなたのような神を冒涜する輩の居場所はありません!」
「大修道院長様! 何故そのような……」
「何をグズグズしているのです! ……アダルバート!」
モリスは大声でドアの外に呼びかけた。すると、今までどこに控えていたのか、ネルソンたちを初日にここまで連れてきた大男が飛んでくる。
「この大馬鹿者をすぐにこの大修道院から摘み出しなさい! 二度とこの地を踏めないようにするのです! それから、メリルという修道女も探して来なさい!」
異常にも聞こえる命令だが、アダルバートは顔色も変えずに「分かりました」と言うなり、ヘンリエッテの腕を掴んだ。
「大修道院長様!」
大男に腕を捩じられながらも、ヘンリエッテは未だにモリスの決定に納得がいかないような顔をして叫んだ。
「その鬼女は聖女様を不幸にします! そんな者などいなくなってしまえばいいのです! 追い出すのなら、私ではなく鬼女を……」
「くどいですよ!」
モリスは顎で廊下の向こうを指した。大男は、大修道院長の命令を忠実に実行する。アダルバートに引きずられ、ヘンリエッテは強制的にその場から排除された。
モリスはメリルへ審問を行い、屋根の上にいたドローレスを困らせようと梯子を外したのも、彼女の仕業だという事を突き止めた。
その日の内に、ヘンリエッテとメリルはインディゴ大修道院を追い出される事が正式に決定した。二人とも、最後まで鬼女を呪う言葉を吐き続けていたという。
突然の女子修道院長たちの追放に、大修道院は一時騒然となった。ドローレスが二人をはめたのだとか、ヒルダが陰で手を回したのだとか様々な噂が飛び交った。
だが、そんな流言もモリスが直々に詳細な事の顛末を皆に話した事で徐々に収まっていき、やがてはドローレスがこの大修道院に来た当時と同じ状態が訪れるまでになった。
ドローレスが無理な仕事を押し付けられる事もなくなったが、それもモリスが、「馬鹿な事はおやめなさい」と修道女たちを一喝してくれたおかげだ。
もしかしたら最初からモリスを頼っていたらこんな事にはならなかったのだろうかと、ネルソンは何もかもが解決した後で少し後悔した。




