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神の代行者

 告白を聞いても、ヘンリエッテは無表情のままだった。だが、やがて、その口がゆっくりと開く。


「私は神の代行者として、正しく天誅てんちゅうを下したまでです」


 ヘンリエッテが、じっとりと湿った視線をドローレスに向ける。そのあまりの陰鬱さに、ドローレスは身を竦ませた。


「鬼女様は、初めから聖女様の事を憎んでいた。あのような高貴な存在に憎しみを向けるなど、あってはならない事だというのに。私は、神が鬼女様に罰を与えてくださるように毎日祈っていました」


 それは祈りではなく、呪いに他ならなかった。あまりの事に、ドローレスは口元を手で押さえて震えている。


「ですが、その時は中々訪れませんでした。そしてある日……聖女様のお部屋に、ウサギの死体が入れられていたのです」


 ヘンリエッテの瞳がますます暗くなり、口調には怨念としか形容のしようのない不気味さが宿りだす。傍で聞いているネルソンでさえも憂鬱な気分になってくるのに、当事者のドローレスの心中は察するに余りあった。


「鬼女様は聖女様を憎悪するあまり、ついに罪なき生き物まで手にかけてしまった。もうこれ以上は、放っておけなかったのです」


 だから、修道女たちがドローレスに大量の仕事を押し付けても素知らぬ振りをし、挙句の果てには殺人未遂が起きたというのに、その犯人を庇ったのだ。


 ヘンリエッテにしてみれば、聖女を害する悪の鬼女を懲らしめようとしたのは正しい行いであって、その事について隠匿したところで、それは何ら間違った行為ではないと考えたのだろう。


「……あのウサギは私じゃありません」


 ドローレスはヘンリエッテから漂う負の気配にすっかり萎縮してしまっていたが、それでも気丈に反論してみせた。


「どうして分かってくれないんですか! 私、もう何度もそう言っています! あれは、誰かが私を陥れようとしてやった事に違いありません!」


 ドローレスは、ドレスのスカート部分を握りしめた。


「それに、罪のない動物なら、あなただって殺しているでしょう。私の部屋に、鳥の死体なんか入れたりして……」

「それは私ではありません」

 ヘンリエッテは心外そうに言った。


「全く心当たりのない事です。……あなた様の言い分と同じでしょう。誰かが私を陥れようとしたのです」

「もう結構です」

 モリスがぴしゃりと言い放った。

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