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囚われた姫と王子様

「ドローレスさん……?」

 

 だが、暗い誘惑に身を任せそうになっていたドローレスは、頭上から降ってきた声に我に返った。顔を上げると、目を丸くしたネルソンが立っている。


「どうしたんだ、その姿!」


 ドローレスと目が合うと、ネルソンは悲鳴のような声を出してドローレスを助け起こした。


「一体何が……? どうしてこんなにボロボロなんだ……? まるで……」


 ネルソンはそれ以上言葉を続けられなかった。ドローレスが、彼の胸に倒れ込んだからだ。


「ネル、ソン、さん……。わ、私……」


 ドローレスが先程まで感じていた薄暗い衝動は、ネルソンの顔を見た瞬間にどこかに行ってしまった。それよりも、怪物にさらわれた姫が自分を救い出してくれた王子に縋りつくように、今のドローレスは、ただ彼に抱きしめられていたかった。


「……大丈夫、ドローレスさん。僕がいるから」


 全く事情を把握できていないネルソンだったが、ドローレスの怯えを察してか、無理に事情を聞いてこようとはしなかった。代わりに額や頬に軽く口付けて、ドローレスを慰めようとする。


「とりあえず、少し落ち着こうか」

 ネルソンは乱れたドローレスの髪を直しながら優しく言った。


「ドローレスさんの部屋へ行こう。そこで詳しい話を聞かせてほしい」

「……ええ」

 ドローレスは小さく頷いた。


 ネルソンに肩を抱かれて、ドローレスは歩き出す。もう一歩も動けないと思っていたはずなのに、彼と一緒だと嘘みたいに軽やかに足が動くのが不思議だった。

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