資料室にて
ネルソンは資料室に向かった。以前に女子修道院長のヘンリエッテから、資料室には大修道院にいる全ての者の仕事の記録が保管されていると言われたのを思い出したのだ。
初めからここを調べていれば少しは調査の効率も上がったのかもしれないが、迂闊な事に、今までその存在をすっかり忘れていた。
女子修道院にある資料室は、ごみごみした部屋だった。それだけでなく、床には絨毯みたいに埃が積もり、天井には蜘蛛の巣がかかって白いレースのようになっている。
誰も業務の記録になど興味を示さないのか、書かれた業務日誌などはその辺の棚に適当に詰められたり、机の上に乱雑に置かれていたりして、何年も掃除や整理をしていないのが丸分かりだった。
そのため、ネルソンは目的のものを見つけるのにかなり手間取った。それでも、何とか事件のあった日の修道者たちの仕事の記録を見つけ出したネルソンは、床に落ちていた記録用紙で滑って転んだ際に打った腰に手を当てながら、その内容に目を通した。
(修道女メリル……学校にある花壇の手入れ……時間は朝から夕方まで……)
記録によると、あの日のメリルは、本来は丸一日、学校の校庭で土いじりをしているはずだった。
ネルソンは、女子修道院の地図を頭の中で思い浮かべる。学校とあの納屋は全くの別方向に位置していた。つまり納屋は、学校にいるはずの人物が何の用もないのに偶然通りかかるような場所ではないのだ。それなのにメリルの姿を納屋付近で見た者がいる。
(怪しいな……)
ネルソンは顎に手を当てた。このメリルという修道女は、何らかの形で事件に関わっていると考える方がいいだろう。
思案しつつも、ネルソンはもう一度記録に目を落とした。そして、今度は別の発見をする。あの日、納屋のそばで仕事をしていた人物がもう一人いたのだ。しかもそれはヒルダだった。彼女は、あの辺りの草取りをしていたのである。
もしかしたら、ヒルダはメリルの姿を見ているのではないだろうか。ヒルダならメリルを庇って嘘の証言をするとは思えなかったし、本当の事を話してくれるはずだ。ネルソンはさらなる目撃者を求めて、ヒルダを探しに資料室を出た。




