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容疑者発見

 ネルソンは他の人にも聞き込みをした。何度も外れを引いたが、時には有力な情報が手に入る事もある。


「確か一人の修道女さんが、あの辺りにいたような……」


 この大修道院に出入りしている商人の言葉だった。彼は事件当日もここに来ていたという。彼の言った『あの辺り』というのは、納屋付近という意味だった。


「その修道女の名前は!?」


 やっと得られた価値のありそうな情報に、ネルソンは息巻いて商人に尋ねた。だが彼は、「さあ……」と頼りない返事をする。


「ここには沢山の修道女さんがいらっしゃいますからねえ。私の知らない方も、大勢いらっしゃいますよ」

「……では何故その時納屋の近くに人がいた事を覚えているんだ」


 ネルソンは途端に険悪な顔になった。一日中聞き込みをしていたせいで疲れ気味だったのだ。


「知り合いでもない修道女の事を覚えているなんておかしいだろう。……まさかあなたが犯人なのか? 捜査をかく乱しようと偽の証言をして、居もしない修道女の事を話している……」


 しかも、ネルソンは疲れのために疑り深くなっていた。我知らずに猜疑心さいぎしんに満ちた視線を商人に向けていると、彼は失敬な、とでも言いたそうな顔になる。


「私がその修道女を覚えていたのは、彼女が一度見たら忘れられないような特徴的な顔をしていたからですよ! それに、客商売だから人の顔を覚えるのは得意なんです!」

 

 憤慨する商人に、ネルソンは我に返って非礼を詫びた。そして、頼み込んでその修道女の似顔絵を書いてもらう事に成功する。


 そこに描かれていたのは、確かに商人の言う通り、一度目にしたら記憶に焼き付いて離れないような人物だった。


 紙の様にのっぺりした顔に、貝みたいに小さな目鼻。半開きの口からは不揃いに散らばった歯が覗いている。お世辞にも美人とは言い難いが、かと言って不細工の一言でも片付けられないような、まるで工作の苦手な人が作った『人間』という作品のような顔立ちだった。


 ネルソンはその似顔絵を持って、聞き込みを再開する。すると、すぐにそれがメリルという修道女だと判明した。


 彼女は納屋の近くで一体何をしていたのか。直接聞きに行っても白を切り通されるのがオチなので、ネルソンは彼女のあの日の予定を調べてから、言い訳を用意する暇もないくらいに電撃的に訪問してやる事にした。

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