名探偵?
次の日、ネルソンは犯人捜しのために女子修道院に赴いていた。
事件のあった納屋は、すでに使い物にならなくなっているので、取り壊される事が決定していた。その前に調べられるところは調べ、スケッチも取っておく。まるで探偵のような気分だ。
今回の件が人為的なものであるのならば、どう考えても犯罪だ。普通なら警邏隊が来て、あちこち捜査し、全力で犯人逮捕を目指してくれるだろう。
しかし、この修道院という場所ではそうはいかない。ここは世俗との関わりを絶った神聖な場所と考えられているのだ。そのため、余程の事がない限り、修道院の者に世の中の法や決まりを強いる事は出来ないのである。
ネルソンとしては、これは『余程の事』に充分該当すると思うのだが、どうもそうは見なされないようであった。だとするならば、自らの手で犯人を見つけ出すしかない。
この捜査はネルソンの独断で行われていた。初めは女子修道院長のヘンリエッテに言って正式な許可を取ろうかと考えたのだが、以前に彼女が見せた頑なな態度を思い出して、交渉をするだけ無駄だと判断したのである。
その証拠にヘンリエッテは、今回の件を『事故』として大修道院長のモリスに報告してしまったらしい。
ヘンリエッテに協力を頼めないなら、モリスに上申するという手もあったのだが、彼女は彼女で、何かと忙しそうなのだ。きっとモリスも今回の事件を独自に調査してくれているのだろうと思う事にして、ネルソンは一人で奮闘する事にしたのだった。
納屋をあらかた調べたものの、特に目を引くものは見当たらなかった。そこで、ネルソンは聞き込みをする事にした。
相手は、火災が発生したと思われる少し前の時刻に、納屋の付近で木の剪定をしていた二人の修道女だ。犯人の姿を目撃した可能性が高いと思われる者たちである。
「知りませんよ」
しかし、彼女たちの態度はそっけなかった。今日は洗濯でもしていたのか、一人はタライを持っている。
「誰も見ていません。……ねえ、ソニア?」
「え、ええ。ケイの……言う通りです……」
丸い鼻をしたケイというらしい修道女に尋ねられ、もう一人の長身の修道女、ソニアはぎこちなく頷いた。
「他を当たってくださいよ」
ケイは迷惑そうな視線をネルソンに送ってくる。それにも負けずにネルソンは粘った。
「そんなはずはない。よく思い出してくれ」
「知りませんったら」
ケイは眉をひそめた。ネルソンは食い下がる。




