いずれ裁きが
「それに、昨日の事は修道院長様もご存知ですよね? 屋根の上にいたドローレスさんは、梯子を外されたせいで、半日以上もそこから降りられませんでした。下手をすれば、今でも彼女はあそこにいたのかもしれないんですよ? こんな事があったのに、まだ放っておくんですか?」
「大変な事故でしたね」
ヘンリエッテは同情する気など欠片もないといった声を出した。
「梯子を片付けてしまった者の考えが足りなかったのでしょう。見つけ次第、注意をしておきます」
見つける気などないくせに、とネルソンは心の中でなじった。そして、ヘンリエッテはさらにとんでもない事を口にする。
「ですが……これは天罰と見るのが妥当かと私は思います」
「天罰……?」
どういう意味だとネルソンは首をかしげた。
「鬼女様は、聖女様を害そうとなさっています」
無感動だったヘンリエッテの声に情念が宿ったのを、ネルソンは見て取った。それは紛れもない強い怒りの感情であった。
「聖女様は、この地上で最も尊く清らかで祝福されし存在。そのような方を虐げるなど、恐れ多い事です」
「今回の事は、ドローレスさんの自業自得だったと言うんですか!?」
ヘンリエッテの言いたい事を察して、ネルソンは愕然とした。
「ドローレスさんがクレアを嫌っているから、その報いを受けたのだと?」
「その通りです」
ヘンリエッテは、取り付く島もない程にあっさりと肯定してみせた。
「鬼女様が聖女様への態度を改め、今までの己が罪を心の底から悔い、それ贖わない限り、彼女に救いの道はありません」
ヘンリエッテは、まるで聖典を読み上げるかのように厳かに述べた。
「それが出来ないと言うのならば……いずれ、さらに重い神の裁きが下るでしょう」
聖女に心酔する修道者の狂気の言葉に、ネルソンは肌の粟立ちを覚えていた。きっと、無意識の内にネルソンには分かっていたのだろう。今回の件は、まだドローレスに降りかかる苦難の、ほんの入り口に過ぎなかったのだという事が。




