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枯れ木に讃美歌

 青嵐の鬼女とは、人々に不幸と争いを与える存在。そのため、このレイファーニュ王国において、鬼女を歓迎する者などまずいない。


 鬼女はどこに行っても疎まれる。一生後ろ指をさされ、白い眼を向けられて生きていかなければならない。


 このインディゴ大修道院は、そんな鬼女の唯一の拠り所となる場所として作られた。ここにいれば、鬼女は他の人々と同じように生きていける。そうでなくてはならないのだ。


 だが、その実態はまるで別物だった。この修道院のほとんどの者たちは、ドローレスを受け入れる気など全くないどころか、あからさまに嫌っているのだ。


 こんな事が許されて良い訳がない。少なくともネルソンは、こんな事態を看過できなかった。今回の件を経て、それを改めて実感した。


「ドローレスさんの事は、どうにかならないんですか?」


 ドローレスが屋根の上から発見された翌日、ネルソンは女子修道院長のヘンリエッテの下を訪れていた。


「ドローレスさんは悪質な嫌がらせを受けています。彼女の手に余るような仕事を色々と言い渡されて、もう限界なんです」


 ネルソンが必死にドローレスの窮状を訴えている間、ヘンリエッテは執務室の重厚な椅子に腰かけ、枯れた植物のようにじっとしていた。ネルソンの言葉が終わると、ヘンリエッテは無味乾燥な声を出した。


「仕事は適切に割り振られています」


 ヘンリエッテは立ち上がると、窓に近づき、ネルソンに背を向けた。


「資料室に、誰がいつ、何の奉仕活動をしていたのかについての記録が保管されていますから、嘘だとお思いなら覗いてみてください」

「皆は、自分の仕事をドローレスさんに押し付けているんですよ!」


 ヘンリエッテのあまりにそっけない態度に、ネルソンは腹立たしい気持ちになった。


「ドローレスさんはそれを断れません! 断ったら、もっとひどい罰が待っていますから!」

「与えられた仕事を完了できなければ、罰せられるのは当然の事です」

「でもそれは、元々ドローレスさんの仕事ではないでしょう!」


 ヘンリエッテの融通の利かなさに、ネルソンは頭痛がしてきた。

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