捜索開始
こうして、ドローレスの捜索が始まった。
クレアの呼びかけに応じてくれた者たちの中には、修道者だけでなく、たまたま大修道院に来ていた近隣の住民や商人たちもおり、全員が一堂に会すると、広場から人が溢れる程であった。
ただ女子修道院の中を見て回るだけなのに、これではまるで、行方不明の者を探しにでも行く時のようだ。
何だか随分大事になってしまったような気がするが、何はともあれ、ここまですればすぐにドローレスは見つかるだろうと思われた。
そんな状況であったので、ネルソンの心配事は他に移っていった。
捜索隊の中には、敬愛する聖女の役に立てるのが嬉しくてたまらないといった者たちもいるようだったが、大半は、何故自分が鬼女を探すのを手伝わないといけないんだという顔をしていたのだ。聖女に頼まれたから来たものの、いい迷惑だと考えているようである。
ネルソンは、ドローレスが見つかった途端、彼らが彼女に対して、何か心無い言葉の一つでも吐くのではないだろうかと憂慮していた。
しかし、すぐにそんな事を考えているどころではなくなってしまった。これだけの数で探せば、ドローレスを見つける事など容易いだろうというネルソンの目論見は外れ、女子修道院内のどこにもその姿はなかったのだ。
もしやと思って待ち合わせ場所にももう一度行ってみたが、そこにもドローレスはいなかった。ネルソンは途方に暮れる。
(これじゃあ、本当に行方不明みたいじゃないか……)
一向にドローレス発見の報が入らないので、ネルソンは段々と不安になってきた。怪我をして動けなくなっているのではないかとか、気を失って倒れているのではないかとか、嫌な想像が止め処と無く湧いてくる。
そんな中、一旦全員で広場に集まって、情報を整理する事が決定した。
「一体、ドローレスさんはどこに行ってしまったのでしょう?」
クレアが首をかしげた。「あの、聖女様……」と、一人の修道女がおずおずと手を挙げる。
「私、鬼女様のお姿を見たという人を見つけました。その人は、鬼女様は宿舎の東棟の方に向かって行った気がすると言っていましたが……」
中々ドローレス本人が見つからないので、せめて手がかりだけでもと思い、聞き込みをしてくれた人もいるようだった。親切な人もいるものだと、ネルソンはその女性に感謝する。
「ですが、そこにはいませんでしたよ」
一瞬、事態解決の足掛かりが見えたような気がしたが、ヒーローの一人のルースが、それに口を挟んだ。
「宿舎の周囲だけでなく、中もカルヴァンと二人で見て回りましたが、彼女はいませんでした」
その通り、とばかりにカルヴァンが頷く。
「だが、人が煙のように消えるなんて事、あるわけないだろう」
セシルが眉根を寄せた。
「どこかには必ずいるはずだ」
「でもよ、今のところ、手がかりは全くないぜ」
ロビンが目を眇めながら西の山の端を見た。オレンジ色の夕日が、ゆっくりとその姿を隠そうとしているところだ。もうすぐ夜が訪れる。そうなってしまえば、捜索はますます困難なものになるだろう。




