攻略なんてされたくない
「あら、姉様もご一緒でしたか」
クレアは、ネルソンの発見から少し時間を置いて、姉の姿を認めた。
「二人で何か楽しいお話でもしていたんですか? 私も混ぜてほしいです!」
「何を呑気な事を言っているのですか」
ヒルダが、やれやれといった風に返す。
「わたくしたち、ドローレスさんがどこに行ったのか、探しに行くところでしたのよ」
「ドローレスさん? どこかへ行ってしまったんですか?」
「ああ。そういう訳だから、今君と遊んでいる暇はない。あっちへ行っていてくれ」
ネルソンはクレアに向かって、犬を追い払うように手のひらを振った。しかし、クレアは去ろうとしない。
「ネルソンさん、もし良かったら、私も……私たちも、ドローレスさんを探すのを手伝いますよ? ……皆さんも、それでいいですよね?」
クレアはヒーローたちに尋ねる。彼らは判で押したように頷いた。ネルソンは目を丸くしてしまう。
「手伝ってくれるのか? だって君は……」
ドローレスを邪魔だと思っているのに。だがクレアは、「困っている人を放っておけませんから」と言って、聖女に相応しい優しげな笑みを浮かべた。
「そう……か。ありが……」
礼を言いかけて、ネルソンははっとなった。今、クレアの頭上の好感度ゲージが、わずかに上昇したような気がしたのだ。
(あ、危ない……)
ネルソンは冷や汗をかいた。こういうのを絆されると言うのかもしれない。自分は危うくクレアに攻略されかかったのだ。
――ネルソンさんもいつか、クレアの聖女としての魅力に憑りつかれる日が来るかもしれませんわ。
前にヒルダが言っていたのは、こういう意味だったのだろう。ネルソンは警戒心を強めた。
(クレアが手伝いを申し出てきたのは、僕の好感度を上げるためだ)
ネルソンは自分に言い聞かせた。この優しさには、裏があるに違いない。騙されてはいけない。彼女に心を許した時が、自分が攻略されてしまう時。すなわち、ドローレスと別れなければならない時だ。
「他の方にも声をかけてみますね」
ネルソンの思いなど知る由もないクレアが朗らかに申し出た。確かに聖女の呼びかけなら、皆応じてくれるかもしれない。人数が増えれば、それだけ早くドローレスも見つかるというものだ。
自分の立場を最大限に利用して尽力してくれるクレアに、ネルソンはまたしても心が動きそうになったが、唇を噛んでその温かい感情を必死で押し殺した。




