いっそ、どこかへ……
「でもドローレスさん、あなたは、このままだとずっとクレアに悩まされるんではなくって?」
ヒルダは残酷な現実を突きつけてきた。
「だって、そうでしょう? クレアがどんな子か、あなたはよく知っているはずですわ」
「ええ、もちろん。クレアは強欲でしつこい泥棒みたいな女よ」
話している内に、ドローレスの苛立ちは高まってきた。ヒルダの前だと言うのに、つい彼女の実の妹の悪口をぶちまけてしまう。
「さっさと私たちの前から消えてくれればいいのに」
「クレアはここからいなくなったりしませんよ」
残念そうにヒルダが言った。
「あの子は諦めるという事を知らないのです。これまで、欲しいものは何だって手に入れてきたのですから……」
実の姉にまでこんな事を言わせるなんて、クレアは何て傲慢な娘なのだろう。ドローレスは憤りと同時に呆れを覚えた。
「じゃあ……私、どうすればいいのかしら……」
「そうですね……。クレアを追い払うのは難しいでしょうから、もういっそ、あなたがどこかへ行ってしまう方が早いかもしれませんわ」
「えっ、私が?」
思いもかけなかった言葉に、ドローレスは驚いた。
「だってその方が……でも、そんなの無理ですわね」
ヒルダは自分で言っておいて、先程の台詞を否定してみせた。
「だって、このインディゴ大修道院は、青嵐の鬼女の居場所なんですもの。出て行くなんて、出来っこありませんわ」
ヒルダがそう言った時、真夜中を告げる鐘の音が聞こえてきた。「あら、もうそんな時間ですか」と言って、ヒルダは立ち上がる。
「わたくし、そろそろお暇しますわ。ではドローレスさん、今夜くらいはゆっくりお休みになってくださいませ」
パタンとドアが閉じる音がして、ヒルダは去っていった。
だが、ドローレスは到底休むような気にはなれなかった。先程ヒルダが何気なく漏らした言葉を頭の中で反芻する。




