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「いい気味ね。あんな事になっちゃって」


 ケイの視線の先にいたのはドローレスだった。大量にあるシーツや服などの洗濯物を干しているところだ。これは本来なら、最低でも十人くらいの修道女が行う仕事になっているが、今その場にいるのはドローレスただ一人である。


「でも、ちょっとあれはひどくないかしら?」

 ソニアは眉をひそめた。


 事件の犯人がドローレスであるという疑いが浮上して以来、皆のドローレスへの態度はガラリと変わった。今まではその存在に怯えてなるべく視界に入れないようにしていたのが、今度は彼女に沢山の仕事を与え、一日中立ち働かせるようになったのだ。


 しかもその仕事というのは、今回の大量の洗濯物を任せる事のように、一人でするのは骨が折れるようなものばかりであった。そして、期限までに間に合わなかったり、少しでも不手際があったりすると、罰として仕事を更に増やされたり、食事を抜かれたりするのだ。


 これは明らかな嫌がらせだった。敬愛する聖女に度を越した蛮行を働いた報いを、大修道院中がグルになって鬼女に受けさせようとしているのだ。


「あんな風に鬼女様を害していたら、いつか私たち、呪われてしまうんじゃないかしら……?」


「あら、何であたしたちが呪われないといけないの? あたしたちは間違った事なんてしていないわ。この大修道院に来たからには、労働力を提供するのは当たり前。彼女にも、そうしてもらっているだけよ。それに、きちんとお仕事が出来なかったら、ペナルティが課せられるのは当然の事じゃない」


 ケイは悪びれもせずに言うと、足元にじょうろを置いた。


「あたし、宿舎の東棟の雨どいの修理を頼まれているんだけど、大工仕事ってどうも苦手なのよねえ。後で鬼女に頼んで、替わってもらおうっと」

「ちょっと! 自分の仕事を押し付けるのは良くないわ!」

「押し付けるんじゃなくて、手伝わせるだけよ」

 ケイはのらりくらりとソニアの非難を交わす。


「ま、罪滅ぼしってやつ? せいぜい頑張って働いてもらいましょうよ」

「……皆の腹いせが終わるのは、鬼女様が働き過ぎで死んでしまった時でしょうよ」


 ソニアは暗い顔でドローレスのこの先を憂うしかなかった。

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