同じ釜の飯を食べてみる
(やってしまったわ……)
女子修道院の敷地の中を歩きながら、ドローレスはどうしようもない自己嫌悪に陥っていた。
もうヒルダにやきもちを焼かないと決めたはずだった。だが、そんな決意をあっさりと裏切るように、ネルソンが彼女の名前を出した途端、腹の内からむくむくと嫉妬の感情が湧き出てきて、彼女を認めたくない一心から、今の状況を自分で何とかすると言ってしまった。
(ネルソンさん……私が馬鹿な事を考えていたって気が付いていないかしら)
ネルソンにだけは嫌われたくないのだ。クレアはともかく、ヒルダの事まで心の内では疎ましく思っているなんて悟られる訳にはいかない。友人に嫉妬するなんて、面倒な女だと思われるのは嫌だった。
そのためにも、今回の事でヒルダの手を借りなかったのは、あくまで自分で全てを解決できるからなのだとネルソンに示す必要があった。
ドローレスは食堂の中に入った。『同じ釜の飯を食う』と表現するように、修道者たちと共に食事をすれば、少しは自分に対する警戒心も薄まるのではないかと思ったのだ。
乳白色の石壁が暖かな雰囲気を感じさせる室内には、料理を配膳する時の音や、人々の話し声が溢れていた。長いテーブルがいくつかある。どこに座っても良いのだろうかと思いながら、ドローレスは辺りを見回していた。その最中、一人の修道女と目が合う。
「ぎゃあっ」
彼女は叫び声をあげて、鍋を掻き回していたレードルを取り落とした。それがきっかけとなって、人々は青嵐の鬼女の登場に徐々に気付いていき、食堂は段々と静まり返っていく。
皆が遠巻きに自分を見ている事、そしてその視線が、決して好意的なものではないという事をドローレスは敏感に感じ取った。居た堪れなくなってすぐにここから出てきたいような気にさえなったが、ドローレスは歯を食いしばり、一番近くのテーブルについた。




