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待ち焦がれた日

 みずみずしく透明な青色の空。刷毛で塗ったような雲の縁が太陽に照らされ、虹色に輝いている。


 よく晴れた朝の事だった。澄んだ鐘の音に見送られながら、インディゴ大修道院の聖堂から、一組の男女が歩いてくる。


「おめでとうございます」


 参列者を代表して祝いの言葉を述べてきたのは、大修道院長のモリスだった。ネルソンとドローレスは、「ありがとうございます」と笑顔で応じた。


 ネルソンとドローレスの結婚式の出席者は、あまり多くはなかった。モリスは来てくれたが、他の修道者たちにとっては、大して興味を惹かれる出来事ではなかったのだろう。だが、ドローレスはそんな事、気にした素振りもなかった。


「何だか、秘密の結婚式っていう感じで素敵ね」

 

 それどころか、そんな風に言って悪戯っぽく笑ってみせたのだ。


「本当だね」


 ネルソンも微笑むと、自分の花嫁を眩しげに見つめる。


 真っ白なドレスを身につけたドローレスは、いつにも増して可憐だった。その服装や髪形に華美さはないが、それでちょうどいい。


 ドローレスの美しさの前では、どんな豪華な花嫁衣裳や趣向を凝らした髪形だって霞んでしまい、その真価を発揮できなくなってしまうだろうとネルソンは思っていた。


「どうしたの? そんなに見つめて」


 ネルソンが見惚れていると、その視線に気が付いたのか、ドローレスが不思議そうに尋ねてきた。「見とれていたんだよ」とネルソンは正直に話す。


「とても綺麗だから」

「あら、ネルソンさんも素敵よ」

 顔を赤くしながらドローレスはネルソンを褒めた。


 ドローレスのドレスと同じ布地で作ったネルソンの衣装も光沢のある純白をしていて、日の光に目映い程に輝いている。二股に別れた上着の裾には、藍色の糸で刺繍がしてあった。裁縫の苦手なネルソンだが、この刺繍だけはどうしても自分でしたくて必死に練習したのだ。


 参列者の短い列を抜けた先に馬車が止まっている。もうどこへ行こうと誰にも止められる所以はないが、ネルソンたちはこれからもこの大修道院で暮らそうと決めていた。


 ここでの生活はネルソンの性に合っているし、もうドローレスをいじめる者たちはいないのだ。きっと慎ましくも幸せな日々を過ごせると二人は信じていた。


 だが、その前に少しだけ、この近くにある景色の良い高原に旅行に行く計画を立てていた。ネルソンがずっと渇望していた蜜月の時間だ。

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