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全て、あなたに

 衝撃の告白を終えた後、ヒルダは立ち上がった。


「ですが、わたくしの実験ももうおしまいですわ。面白い研究をさせてくださってありがとうございました。ネルソンさんには感謝いたしますわ」


 ヒルダはネルソンの脇をすり抜けて部屋から出て行こうとした。ネルソンはその腕を反射的に握る。このままヒルダを行かせたら、もう二度と彼女と会えなくなるような気がしたのだ。


「ヒルダ……」


 ネルソンは何と声を掛けて良いのか分からなかった。ヒルダは俯いて肩を揺らしている。


「……離してください」


 ヒルダが消え入りそうな声で呟いた。やけに震え、籠った声だった。ネルソンはまさかと思い、ヒルダの肩を掴んでこちらを向かせた。


 ヒルダは泣いていた。丸い目から零れた涙が、顔中をグシャグシャに濡らしている。こんなに憐れな表情のヒルダを見るのは初めてだった。


「ヒルダ……君は嘘をついているね?」


 ネルソンは己の直観に従って口を開いた。


「君が今までやってきた事は、本当にこの世界の理を解き明かすためだったのか? 実は……別の目的があったんじゃないのか?」


「わ、わたくしは……」


 ヒルダがしゃくりあげた。瞳が不安げに揺れ、唇が歪んでいく。彼女の葛藤が透けて見えるようだった。


「ヒルダ、もし君がどうしても言いたくないと言うのなら、無理に話さなくても構わない」


 ヒルダがどこまでも傷ついた目をするものだから、ネルソンも胸が痛くなってきた。


「確かに僕は本当の事が知りたい。でも、君を過度に責めたくはないんだよ。僕はただ……」

「どうしてあなたはそんなに優しいんですか!」


 ヒルダは急に憤った。肩に置かれたネルソンの手を強引に振り払う。


「あなたがそんな人だから、わたくしは……!」


 ヒルダは今度は萎れた花のように黙り込んでしまった。そのあまりに急激な感情の振れに、ネルソンは困惑した。


「ヒルダ……? 大丈夫か?」

「……ええ」

 

 ヒルダは顔を上げた。まるで最後の誇りを込めた仕草のように見える。


「良いでしょう。お話ししますわ」


 ヒルダは涙を拭って、胸の前で硬く拳を握った。


「わたくしが今まで思ってきた事、考えていた事、全て、あなたにお教えします」

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