果たされた約束
「そんな事より、今はこれだよ」
ネルソンは再びドローレスにイヤリングを差し出してきた。どきりとして、ドローレスは硬直する。
「そんなに怯えないでくれ」
ネルソンは懇願するような声を出した。
「あなたがクレアの代わりに聖女になるんだ。大丈夫、大した事じゃない。これをつけるだけだよ」
「でも……」
「ドローレスさん、僕を信じてくれ」
真っ直ぐに見つめられて、ドローレスは心を射抜かれたような気がした。その強い眼差しに、息が止まりそうになる。
(ああ……この人は本心から、私の事を考えてくれているのね……)
それはまさしく、『愛』と表現してしかるべき感情だ。彼の一途な想いに触れて、ドローレスの心のどこかにあった凝り固まった部分が、柔らかく解されていく。ネルソンがこんなにも自分を――自分だけを愛してくれているという事に、どうして今まで気が付かなかったのだろう。
馬鹿だったのは自分の方だ。変に嫉妬してみせたり、おかしな想像を巡らせたりして、結局は、自分で自分を傷つけていただけだった。ネルソンは最初から最後まで変わらなかった。変わらずに自分を愛してくれていたというのに。
ドローレスは縛めから解放されたかのように、体が軽くなるのを感じていた。何かに導かれるような手つきでネルソンからイヤリングを受け取る。
「つけてあげるよ」
ネルソンは微笑んでいた。ドローレスは、今なら彼の笑みに応えられると感じていた。
だが、ゆっくりと口角を上げようとしたのと同時に、部屋に転がり込んでくる者がいた。




