表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

月が綺麗ですね

作者: 水野葵

 初めてきみと二人きりになれたとき、ぼくはきみだけをまっすぐに見つめてこう言った。

「月が綺麗(きれい)ですね」

 空を仰いだきみは、まだあどけなさの残る顔で(うなず)いた。望月(もちづき)の美しい夜だった。

「ええ、そうですね」

 あれからどれほどの長い年月をともに過ごしたのだろう。美しかったきみの顔には深い(しわ)が刻まれ、 黒髪は真綿に染まり、たわいのないぼくの文章も少しは皆に知られるようになった。

 そして、人生の終わりを迎えようとする今、ぼくはあのときと同じ言葉をきみに投げかける。

「月が綺麗だね」

 きみは優しく微笑(ほほえ)んで、あのときと同じように頷いた。

「ええ、そうね」


 星の美しい夜だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  美しい文章だと思いました。  歳をとっても、お互いを思いやる男女が素敵です。  「このタイトルは、夏目漱石が〜」とか無粋な説明が入ったら、ぶち壊しになっていたと思いました。  ありがとう…
[良い点] 美しい文章ですね。 情景が目に浮かんできます。
[良い点] 「月が綺麗ですね」は確か夏目漱石の「I love you」の代名詞だった気がするのですが、それがうまく組み込まれて、作品の純愛度を上げているように思えました。 作中の時が経っている表現(美…
2023/01/03 08:02 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ