ある日親父が言った一言から始まった俺の災難
以前というか何年も前に初めて書き始めた小説を諸事情により放置状態となっていたことが、ずっと気になってました。
今回、設定を少し変えての再出発です。
仕事をしながらの更新なので、不定期プラス遅筆だと思いますが宜しくお願いします。
感想批判大好物です。モチベーションに大きく影響しますので、何か下さい。
大学卒業後 それなりの会社の内定を勝ち取った俺は、入社式後そのまま会社の保養所で行われた二週間の新入社員研修合宿が終わり、久々の実家に帰省した日の夜 親父が突然こう言った。
「いいかお前ら、今年のゴールデンウィークは一日たりともゲーム禁止!デート禁止!連休前夜から家族全員で俺の故郷へ旅行に行くぞ」
「「はぁぁぁあぁぁぁ?!」」
「あらぁ~家族旅行なんて龍斗が高校生の時以来ねぇ~」
最近生意気だけど、母ちゃん似の美人可愛い弟の隼人と思わずハモってしまった。
隼人は母ちゃんの遺伝子が濃かったのか、俺とは違い華奢な体躯で身長も165で止まった。巷で有名な美少女だ(男だけど)。
その横で、吞気な感想を述べてる一見天然系美少女とも言える容姿で、嬉しそうに手を合わせているのは俺たち兄弟の母ちゃんだ。
この可愛い生き物が実は四十超えてるとは誰も思うまい。実際、ほぼ100%の人が未だ信じていない。
隼人より5㎝ほど低い身長は二人並ぶと美少女姉妹の妹にしか見えない。
親父と並んで歩けば、初めての彼氏に照れながらも可愛く寄り添うまるで赤ずきんの様な美少女高校生彼女と、狼の皮が上手く隠しきれてない無駄にイケメンな大学生彼氏の出来上がりだ。
「おい!そう言う事はもっと早く言えよ親父。ゴールデンウィークってもう二週間もねぇじゃねぇかよ!俺はもう学生じゃねぇんだぞ!隼人みたいなお一人様と違って色々予定あるんだよ」
「はぁ?!ふざけんなよ龍斗の予定なんかどうせ沙那の小間使いだろ!」
「あーはいはい。お子ちゃまな隼人きゅんには分からないだろうけど、大人は色々とあるんでちゅよぉ わかりまちたか?わかったら 黙っとけボケ!人の彼女呼び捨てにしてんじゃねぇよ!」
俺は隼人を捕まえようとダイニングテーブルの周りを追いかけるが、奴は同じ方向に逃げ回る。
「なぁにが大人だよ!お前だってまだチェリーのくせに!こないだ沙那が言ってたぞ『龍斗って性欲ないのかな?キス以上してくれないんだけど…』ってな!」
沙那の声真似までして隼人がとんでもねえ爆弾投下しやがった。
「お、お、お前……」
「まぁ~でも龍斗ったらもうチューはしたのね~お母さんと結婚するって言ってたあの龍斗がねぇ~」
と、母ちゃん。
「なんだと!龍斗てめぇ姫撫は俺の女だぞ!」
それまで最初の発言後は母ちゃんを膝の上に乗せてご満悦顔していたはずの親父がいきなり参戦して来やがった。
なんだこのカオス。
親父も母ちゃんと同じで年齢不詳の上、一言で言うなら飛び抜けたイケメンだ。
だが、母ちゃんにだけ甘々で、基本 自分の顔に寄ってくる女には笑顔で毒を吐くというアンチフェミニスト。野郎にも好かれやすい、どの年齢層からも兄貴とか呼ばれてる。
自分の出自やこれまでのことを多くは語らない謎属性持ち。
職業もこれまた謎。本人は大工だと言い張ってるが、友人に建築関係が多くて、しかも親方衆ばかりだから口裏を合わせてもらってるだけと俺は見てる。
しかも今は友人なんだろうが元は喧嘩ふっかけてこられて、軽く相手してやったあと、酒飲んで仲良くなったって言うのだから、それどこのバトル漫画?って話だ。
まぁ、酒に溺れるわけでも 女をつくってどうのこうの(そもそも母ちゃん以外の女は嫌いな節がある)なんてのもない
賭け事はたまにしてるみたいだか、ギャンブル全般がクソ強ーからパチンコスロット行けば、景品山ほど持って帰ってくるし、競馬も馬を見れば順位がわかるらしい。競輪もオートレースも以下同文。
もうここまで来ると出来すぎだろ。少しくらいの謎気にもならんわ。
その親父が母ちゃんを丁寧にソファに下ろすとゆっくりとこちらに手をわきわきさせながら向かって来る!
「バカ!ガキんときの話だよ!俺自身覚えてねぇし!そんなの」
「えぇ~私は嬉しかったのに覚えてないの~?」
眉毛をハの字にして口を尖らせる顔は自分の母親ながら可愛い。
親父がその表情を見逃す訳もなく、グルンと向きを変えると目に見えない速さで母ちゃんの前に膝を付き
「俺だけじゃ足りないか?」
と、優しく母ちゃんの両手を掴むと自分の口元へ近づけて軽くキスをした。
顔が真っ赤になった母ちゃんはブンブンと顔を横に振ると
「足りてるってば!恥ずかしいからそういうのやめてよー」
と、イチャイチャが始まった。いつものことだ。
甘い!甘すぎる!ふーとため息を一つ吐いて俺はそーっと逃げようとしてる隼人を捕まえチョークスリーパーをかけてやった。
「ぎ…ぎ、ギブ……龍斗…お兄…様……死ぬっ…………くっ」
気絶した振りをする隼人を逃げられない様にバッグハグしながら、甘い空間を作り出してる両親に構わず声をかけた。こんな光景見慣れすぎてなんとも思わなくなったよ。たまに来てたダチは鼻血出す奴までいたけどな。あいつがどっちの色気にやられたかは奴の名誉のために黙っとく。
「そんで。マジに親父の故郷に行くのか?」
俺は話を戻した。
「チッ… マジだ」
「チッってなんだよ」
「俺の至福の時間に水を差しやがったお前には優しいほうだろ」
これが実の親の発言だろうか。なんで母ちゃんが絡むと途端に残念になるのかが一番の謎だ。
「あーはいはい。んで、俺達がいくら聞いても教えなかったその故郷ってのはどこなんだよ 交通手段は?あんまり遠いと今からじゃチケットとか取れねぇぞ?」
「まだ秘密ですぅ 兎に角、お前らは何日か分のきったねえパンツでも鞄に詰めとけ」
「「はぁ?!」」
親父の巫山戯た発言にイラッとしてまたもやハモった我ら兄弟は恐らく同じ事を予想し、にやっとした。そして母ちゃんを見る。
「酷い!二人の下着も私ちゃんと綺麗にしてるわ!」
そう、母ちゃんが洗ってる我が家の洗濯物を親父はディスってしまったのだから。
「いや!姫撫が綺麗にしてくれてるのはわかってる なんて言うか…奴らのション便臭さが滲んでるって言うか…「匂いだってないわよ~いい匂いの柔軟剤だって毎回使ってるもん」いや、そうじゃなくて!」
俺達は親父にだけ見えるようジェスチャーで『助けては?』とやってやると、引き攣った顔の親父がこれまた母ちゃんに見えないよう小さくハンドサインを送ってきた。
と、ここまでの説明で分かって頂けただろうか我が家のカーストが。
そう、母ちゃんを頂点として成り立ってる我が家は全てが母ちゃん中心となっている と言うのも俺達がまだハイハイしてるような赤ん坊の頃からそうなるよう、親父が擦り込んできた賜物だ。
そして、決して超えられる気がしない魔王の様な親父が母ちゃんの絶対領域として立ちはだかっている。
まあ、超える気もさらさらないんだけどな。無理無理あんな少年漫画やラノベの主人公みたいなおっさん(見た目は同年代にも見えるけどな)に何年経ったって絶対無理。
遅くなったが、自己紹介をしておこう。
俺の名前は 安斎龍斗
年齢は 23 今年大学を卒業したもぎたてのフレッシュマンだ
趣味は 武道全般 休みの日には彼女といるか近所の古武道の道場で稽古をしている
一つ年下の沙那と言う可愛い彼女がいる
沙那はまだ大学生で隼人と同じ大学の4年だ ちなみに隼人は2年
悪い虫が付かないよう隼人に見守らせているがどちらかと言うと隼人が沙那に守られているらしい
………まあ、理由は追々分かるだろう。