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さっきの部屋とは違う広い部屋だ。
ランタンの明かりに照らされてる。
ものすごい数の本棚がアタシを囲んでた。
各棚には見たこともない本がビッシリと並んでる。
なんて大きな本棚だ。
まるでアタシが小さくなったような感覚に陥る。
足元には魔法陣が描かれてた。
これは…?
アタシはあの白い女に、ここへ飛ばされたのか?
それとも、この魔法陣の主に召喚されたのか?
「うん? おかしなものが現れたな」
若い男の声。
アタシが声の方を向くと背の高い男が立ってた。
魔法使いのローブを着て、やたらと分厚いレンズのメガネをかけてる。
「使い魔を召喚したけれど…これはいったい?」
男が首を傾げる。
膝をついてアタシの顔に自分の顔を近付ける。
メガネを外した。
あーっ!!
アタシの全身に衝撃が走った。
カ…カ…カ…。
カッコいい!!
めちゃくちゃカッコいい!!
もろアタシの好みなんですけど!
あー!!
ドキドキしてきた!
男が顔を寄せてくる。
近い、近い!!
「おや? 顔が赤いな。熱でもあるのかい?」
男がアタシのおでこに手を当てた。
あー!
素敵!
って、そんな場合じゃない!
アタシの威厳を示しておかなきゃ!
アタシは男の手をピシッとはねのけた。
「アタシはミーナヘイムの魔女、ミュロクロノス!『大蛇使い』のミュロクロノスよ!」
あれ?
なんか声が変だ。
いやにカン高い。
「ほう」
男が笑った。
笑顔も素敵…。
「なるほど。面白い。僕はカルナディアの魔法使いマーリン。よろしくね、小さな『大蛇使い』さん」
マーリンがメガネをかけ直した。
「ち、小さな!? お前が大きいだけじゃろ!!」
アタシは怒鳴った。
変な声のせいでイマイチ迫力がない。
「そうか! アハハハハ!!」
マーリンが笑いだした。
「ミューは気付いてないんだな」
気付いてない?
てか、ミューって何だ!
勝手に略すな!
「あ。怒ってる顔だね。ごめん、ごめん。あんまり可笑しかったから。じゃあ、教えてあげるね」
そう言ってマーリンはアタシの身体を大きな手で抱き上げた。
「何をする!?」
「はい、これを見て」
マーリンがアタシを大きな縦長の鏡の前に立たせた。
そこには魔女であるアタシの姿が…あれ?
鏡の中には10才ぐらいの小柄でショートヘアの、かわいい女の子が映ってる。
アタシは両眼をこすった。
鏡の中の女の子も両眼をこする。
ええ?
これがアタシ?
「ええーーーっ!!」
アタシは絶叫した。




