聖龍祭①
王太子であるルーカスは、久々に学園へ来ていた。
ここに来て急に王族としての仕事が立て込んでいた為である。
「父上も、楽をしたいと考えるような年齢でもあるまいに」
「殿下の事を頼りにしているからでありましょう。まぁ時期的にも聖龍祭が近いという事もあるのでしょうが」
聖龍祭というのはこの国の建国神話にもある、龍を称える4年に一回ある祭りのことである。
大昔、この辺り一帯が魔物の群れに蹂躙されかかった時に聖なる乙女の呼びかけによって現れた龍が、魔物の群れを払い、その後国を守護する神となったとの故事にちなんだ祭りである。
実際には学園から(正確に言えば、マリアベルと)距離を取らせて様子を見ていたのだが、そんな事とはルーカスもレーベルも気がつかない。
「今年は多くの事を任されている。腕がなるな」
などと呑気な事を言っている始末だ。
「聖龍祭を成功させれば、殿下の評判も上がる一方だね」
「頼んだぞ。グラン。実家のマルボロース商会の力を借りる事になると思うが」
「まかせて!祭りを盛り上げるアイデアならここに詰まってるんだ!」
グランは自分の頭を軽く叩いて大見得を切る。
「今をときめくマルボロース商会の力を借りられたなら、今年の祭りは盛り上がる事、間違いないでしょう」
レーベルが、太鼓判を押す。
「グランが生徒会の仲間で良かった。いろいろ頼む事があるかと思うが、宜しくな」
ルーカスは、国一番の裕福な商家の実家の力を同級生繋がりで借りるつもりらしい。
「まっかせて!僕だって家業の事を色々勉強してるからさ。儲け度外視で協力させてもらうね!」
…スミっこでダニエラがまた使い倒されるのか、とうんざり顔を隠して空気になっていると、生徒会室のドアがダン!と開けられた。
「…どうしたの?いったい」
あまりの勢いに、グランが引き気味にドアを乱暴に開けたアーウェンに問う。
「どうもこうも…」
問いかけられたアーウェンは思い切り渋い顔をしてダン!と壁を叩いた。
「気にいらねぇ」
何事だ?と生徒会の面々がアーウェンを取り囲む中、ダニエラは壁とドアの修繕費の心配をしていた。
(また顧問の先生に怒られる!お前がついていながら…とか!私のせいじゃないってのに!てか庶民が貴族様のなさる事に物言えますかっての!そういうのを期待するなら私にもっと権力を!頂戴!!)
…ダニエラの心の中に下剋上への渇望が生まれたようだ。
アーウェンは壁を殴りつけた手を引き寄せてもう片方の手で撫でている。
どうやら痛かったらしい。カッコワルイ。
痛かったのもあるだろう、うなるように声を搾りだす。
「平等をうたったこの学園の中で特権階級が幅を効かせてやがる」
ソレハオマエラノコトダロ
空気となったダニエラが光を失った目のまま口パクで突っ込んだ。




