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そのころの彼ら

「何と勝手な事を!」

「麦が余って困ってるって言ったのは親父だろ!」


 今年は王国以外の国は麦が豊作だったらしく麦が余った。

 王国は不作だったが、だからと言って主食の麦をよそから滅多に買わない。


 『ジェラルド将軍の麦』を一番にしているからだ。


「よその国で商売した時に余った麦を一緒に買うならっていう商いが続いて、倉庫が売れない麦でいっぱいだって愚痴ってたじゃないか!」


 グランはマルボロース商会の商会長である父と言い争っていた。


「足らないところに持っていけば喜ばれるって、商売は売った方も買った方も笑顔が基本だって僕に教えたじゃないか!」


「だからと言って何でも通るわけではない!見ろ!商業ギルドからの質問状と抗議文の山だ!」


「ギルドが何してくれるって言うんだよ。高い年会費ばっかり取って、いつも肝心な時には何もしてくれないじゃないか!もういいよ!!!」


「待てグラン!!!!」


 いいことをしたと思っていた。


 王都では麦の値が高く、庶民の家計を圧迫しているとマリアベルから教えてもらった。

 ならば、商会の倉庫に眠っている麦を安く提供してやれば買い手、売り手共win-winの関係が築けると、ついでにマルボロース商会の宣伝になると張り切って挑んだ事なのに。


「何が悪いっていうんだよ。高い麦しか生産できないこの国が怠慢なだけじゃないか」


 余っているところから足りないところに物資を供給する、そんなあたり前の事をするのに、何でそんなに問題があるというのか。


 グランには問題が良くわからなかった。

 マリアベルの晴れ舞台である聖龍祭に行くのも禁止され、すっかり不貞腐れていると、アーウェンが用事があると言ってきた。


 親に隠れて、アーウェンと共に彼の懇意にしている武器屋に行けば、何かブランケットでくるまれたものが床に転がっていた。


「…マリアベルが聖龍祭で舞の途中で突き飛ばされて舞台から落ちたのは知っているか?」


「え?大丈夫なの?マリアベルは?無事なの???」


 聞けば、足を捻っただけのようだが、その騒ぎの最中に龍が姿を現し、マリアベルはその為、関係者という事で教会に閉じ込められているという。


「俺は今回の事は、聖乙女達を唆した者がいると考えて、シルビア嬢をこっそり訪ねた。

 もちろん疑っての事だ。だが手違いが起きて…」


 何がなんでもシルビア嬢の自白を引き出し、罪を認めさせる為にこっそり忍びこんだものの、見つかりそうになって思わずシルビアを気絶させて運び出してしまったらしい。



「…。うん気持ちはわかるよ。僕もその場にいたら、同じ事を考えたと思う」



 武器屋に運んだものの、さすがに武器屋の親父も運ばれてきたものを見て、面倒はごめんだと出ていくことをアーウェンに強く求めた。


「とにかく、静かな誰も来ない場所で、自白を引き出すんだ。そうしたら殿下もシルビア嬢を処罰できるだろう?マリアベルのためなんだ。力を貸してくれ。」


 そう言われてもグランにも、自分でどうこうする事も出来ない。


 考え込んだグランは、父親が荒事で使っている男の存在を思い出していた。



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