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貧乏くじをひいてしまったダニエラ

 ダニエラは小さな頃から何でもソツなく出来る子だった。

 辺境の領の中の小さな町で町長をしている父親からは、「おまえが男であったなら…」などと言われて育った。

 評判がご領主様の耳に入り、王都の学園に推薦してもらう事が出来て、王立学園で学ぶ事が出来るようになった時には万能感に酔ったものだった。


 しかし、学園に入れば嫌でも地方と中央の格差、男女の違い、身分制度の壁といったものが立ちふさがるようになる。


 努力や才能だけではとうてい乗り越えれない壁を知り、ダニエラは賢くいろいろ学んだ。


 そうして改めて身のまわりを見直せば、自分の立ち位置というものがわかってくる。


 生徒会の顧問をしているというご領主様のご子息の教師に生徒会会計として生徒会へ放り込まれた時も、自分の役割について直ちに正しく認識した。


 次代を担うであろう、学友達と力を合わせて正しく生徒会を運営していくのが自分の使命だと。


 入ってみれば、未来へ希望を持って進まんとする気持ちのよい人間が多く、辺境で暮らしていたなら決して交わらない貴い身分の方から夢を語られるのは、恐れ多くも身が引き締まる思いだった。


 それが崩れはじめたのはいつであろうか?


 気が付けばピンク髪のひとりの女生徒が生徒会メンバーでもないのに、生徒会室に出入りするようになっていった。

 ひとり、ひとりと生徒会活動に身が入らなくなり、ダニエラの知る人ではなくなって行った。


「嫌い、嫌い。グランもレーベルも嫌い!この服を見て、私が他からどんな風に思われるのか、考えようともしないだなんて!」


 マリアベルを無理やり、聖乙女のメンバーへねじ込んできた事に対して、イザベラ嬢と宰相の子息であるレーベルと口論となり、イザベラ嬢もシルビア嬢の後を追うように聖乙女から降りた。


 その開いた穴に事もあろうか、ダニエラを押し込む事で帳尻を合わせたレーベル達に対して、聖乙女の衣装など、今から準備出来るはずもないと訴えて辞退しようとしたのだが。


「丁度、うちの商会関係の店に出物があったんだー」


とグランが持ってきたのは、イザベラが用意していた聖乙女の衣装だった。


 一度は衣装合わせをしたことのある聖乙女の他のメンバーはすぐその事に気がついて顔色を変えた。


 ダニエラは青ざめ、いっそうの辞退を意思を告げたのだったが、それは叶えられる事がなかった。


 おかげで練習の時から、他のメンバーとは打ち解けるなどもっての他、きつい当たりを食らい続けた。


 それになんでもソツなく出来るダニエラであったが、ダンスなど身体を動かすこと、特にリズム感が必要なものは、苦手としていた。


 型どおり踊っているつもりでも高さが足りない、ひねりが足りない、テンポがずれる。


 おまけに聖龍祭本番の日はどしゃぶりの雨に見舞われてしまった。


 もはや誰も舞を見ていないだろうというどしゃぶりの中で、隣の人のターンとタイミングがずれ、彼女の足がひざ裏に入ってしまった。


 床は雨ですべりやすくなっており、みっともなくダニエラは転倒した。


 あわてて何かに縋ろうとした手が台座にふれ、何かの仕掛けの部品がはずれてしまったようだ。


「あわわわわわ」


 あわてて這って落ちた部品を元あったであろう場所に収め、宝珠の台座の裏手であった事が幸いし起き上がり、舞に戻る。


 ところが、あわてた為に、隣の人とタイミングがずれ、隣の人もリズムを乱され不安定な体勢となる。


 そんな中、


「マリアベルっ!」


 アーウェンの叫び声に見やれば、マリアベルが他の聖乙女とぶつかり、舞台の下へ転がり落ちているところだった。


 マリアベルも練習の時から周囲のキツイ当たりに相当ストレスを溜めていたようで、舞台へ這い上がってくるとキッと自分とぶつかった聖乙女を睨みつける。



 ダニエラがマリアベルを止めようと叫ぼうとしたタイミングで雷が近くに落ちた。









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