表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/42

聖龍祭④


「王都脱出に失敗してしまった」


 聖乙女を辞退したシルビアは項垂れていた。


 すでに、王都は聖龍祭を見物しようとする人の波と、物流の波で脱出しようとすれば骨が折れそうな状態だ。


「はぁ、行きたくないなぁ。仮病使うかなぁ」


 今日は聖龍祭の前夜祭である。侯爵家は、会場と行き来が便利な神殿近くの宿を抑えてあった。

 そちらに午後から移動しなければならない。


 シルビアは辞退してしまったので関係者と顔を非常に合わせにくかった。

 貴族世界でも今回の事についていろいろ言われてもいるであろう。

 今からそれを考えるのも憂鬱だった。


 でも、仲良くなったマリアベル以外の令嬢の晴れ舞台は見てあげたい気もするし、で先程からモンモンとしていたのである。


「王都にいるのになぁ~見ないのはまずいかなー。あーでも面倒くさい面倒くさい」


 どうせ、聖龍祭期間は、どこかでマリアベルやルーカス達に絡まれるのは目に見えている。


 危うきには近寄りたくないのだが。


 侍女達に支度をされつつもウダウダと悩んでいると、兄のベルエールが顔を覗かせた。


「シルビア、支度はできたかい?」


「おにいさまぁぁ」


 情けない声で呼びかければベルエールも苦笑する。


「だめだよシルビア。勝手に聖乙女を辞めてきたお前に、父上は大層おかんむりだ。出かけるのを辞めるなどと言ったらどんな小言をもらうかわからないよ?。それに、お前が聖龍祭に顔を見せなかったら、社交界でも色々言われて評判を悪くするよ?」


「…貴族の矜持なんかではお腹は膨れないと思うの」

「よくも悪くも、僕達はその貴族なんだから、…ふくれっ面をしないで、僕のかわいいお姫様。ほらキャンディをあげるから」


 シルビアと兄のベルエールは、あのマフィンと紅茶の夜から距離が近づき、今では仲のよい兄妹である。それに、兄のベルエールは攻略対象のようだが、今のところ「ヒロイン<妹」のようでヒロインの毒牙にはかかっていないように見受けられる。


「おいひぃ」


「少しは機嫌がなおったかい?向こうでは僕の友人も君のことを心配してくれていて、一緒にいてくれるって。だから背筋を伸ばして、君は堂々としていればいい」


 ベルエールは友人知己を総動員してシルビアを悪意の目から守るようである。


 とはいえ、非難の目はマリアベルや王太子一派に向いているのが大半のようだが。


「イザベラ様も聖乙女を辞退なさったようだ。前夜祭は荒れるだろうね」


 イザベラとは同じ侯爵位の家のご息女である。


 もしかして、同じ侯爵位の自分が先頭を切ってしまったからだろうか。


 シルビアの心は少しだけ痛んだ。


「カルラ嬢とロッテ嬢も君のことを心配していたよ。大丈夫、君の周りは味方でいっぱいだ」

「うん…そう…ね。行かなかったら心配かけてしまうわね」



 シルビアはため息を吐いて、いやいやながら家を出る事にするのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ