パーティを追い出された支援魔術師の特殊スキル
キーワードをあれこれ付け過ぎるのは苦手なので、最低限にとどめましたが。
もしかしたら「作者へのブーメラン」ってのも、入るやも知れません。
「もう我慢出来ない,シドお前をパーティから追放する!」
リーダーのカイルがそう言う,パーティの仲間達も次々に口にする。
「シドがいるとうまく動けないんですよ」
「はっきり言って足手まといだわシド」
そんなバカな。
俺のどこが足手まとい何だ,確かに後衛で補助職でお前達見たいな派手さはないが俺だってしっかりやっているのに。
いやむしろ俺がいなくてこのパーティがやっていけるのか,食事や寝床の支度も買い出しも俺とフィーに全部押し付けてるじゃないかそうだここで俺がいなくなったら,フィーが困る。
「これはみんなで決めたことだ」
信じられないっと言う顔になった俺に,カイルが追い討ちをかけるように言う,他のメンバーもカイルに同意するように頷く。
「嘘だろ…フィーお前もなのかよ」
他のメンバーと一緒にフィーも頷く。
言葉を話せないフィーはいつものようにメモを取り出した,これで筆談するのだ。
『あなたを悪く言いたくはないけれど。
みんなが動けなくなるのは事実』
そんな…そんな,フィーまで…
愕然とする俺を見て,カイルが勝ち誇ったように突き付けた。
「これでわかっただろフィーだってお前が迷惑なんだよ,これ以上俺達に迷惑をかけないでくれシド」
「いちよう仲間だった人にこんなことは言いたくないです,でも…」
「装備を置いて行け何て言わないわでも今すぐここから…私達の前から出ていって」
こうして俺は仲間だった奴等から見捨てられた。
◇◆◇
結論から言おう……
追い出されたシドが、私達に「ざまぁ」をすることは、なかった。
もしかしたら今後、再び彼に会うこともあるかもしれないが……今のところは、何もない。
「シドの魔術に助けられていた部分も、勿論あったが……それでも俺達なら、充分にやって行けるはずだ」
「むしろあいつがいた時より、強くなっていると思うわ。だって、前はこんなに伸び伸び動けなかったもの」
「そうですね……フィーが喋れなかったのも、シドのせいなんでしょう?」
完全に彼のせいでもないのだが……。
それでも、彼がいたから……彼の“特殊スキル”があったから、私はずっと口を閉ざしていた。
シドの“特殊スキル”。
それは……“地の文を支配する”……
一体どう言うことだ……そう思うだろう。
私だって、自分が同じスキルを持っていなければ……そして自覚していなければ、シドの異常性には、はっきりと気付かなかっただろう。
それでも、カイル達も、シドと行動している時だけ自分の行動が制限されることは、解っていた。
正確に言えば……自分の行動と、発言が。
シドは“地の文を支配する”と同時に、“他者の台詞の一部”も支配することがあった。
例えば……先程の追放シーンで言えば、「一応」を「いちよう」と発音させること。
彼の脳内では「いちおう」と読まないのだろう。
同じスキルを持つと言ったが、私よりシドの方が上だ。
私は“語り手”でしかないが……彼には“主人公”の素質があったのだろう。私達と決別した後、新たな出会いを通じて、あっと驚く活躍をするかも知れない。
そして……彼の語る『物語』で、きっと私達は“悪役”になる。
“主人公”である彼を追い出したのだから、当然だろう。
しかし、シドは……自分のスキルを自覚していない。
そして自覚して使うことが出来る私ならば、彼の支配を離れた今、彼を徹底的に避けることは、難しくない。
もしシドと遭遇することがあっても、存在を認めなければ……“描写しなければ”いいのだ。
そうすれば、私の……私達の『物語』に、彼は出て来ない。
“主人公”に「ざまぁ」される“悪役”には、ならなくていい。
フィーの文体も「……」多用の鬱陶しい感じにしてみました。