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BBS―魔物に取り憑かれました。魔力全部喰われました。でも使役しました―  作者: 木村アキエル
一章最終節 この日。こうなる事を誰が予想していたのか?
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いけ好かない奴


アドラスシア魔法学園。緑豊かなアドラスシア王国領再南に位置し都会と隔絶された広大な平原と森に囲まれた魔法学園の最高峰。創立以前より学園中心に存在する天を穿つ尖鋭なクリスタルの柱、通称絶対領域の守護石(クリスタル・グランデ)の加護を受け、外からの魔物は受け付けず、生徒はその恩恵を一身に受けのびのびと勉学に勤しむことが出来る。


世界でも頂点の魔術学校だけあり、そこに在籍する生徒も優秀な人材が揃っており、魔人の再来と呼ばれる天才少年フェイドアや、珍しい光属性の加護を受けた少女マハ等、その個性も粒揃いである。


ただ、注目されると言うことはやっかみの対象でもあるので、何かと学園内での確執も絶えない。


そんな学園内でも優秀な部類に位置するルドルフと言う生徒は、名家の生まれであり幼少の頃より何一つ不自由無く育った。

持ち前の魔法センスもあり、意気揚々と入学したのはいいものの、周りには頭一つ以上飛び抜けた話題性のある生徒がちらほら。


彼は入学したことにより、嫉妬という感情を初めて体験することとなった。


特に今一番鼻持ちならない人間は、ヨハン・トレイルと言う転入生である。

一言で言えば彼は恐らく、訳ありで転入を許された。数週間前、課外学習で学園外に実践演習へと向かった時、マハが失踪する事件が起こった。

学園側も捜索を試みたが行方は知れず、誰しも落胆と悲しみに暮れていた傷が僅かに癒えようとしていた頃、突如彼女は一人の男を連れて戻ってきたのだ。


学園側はその身元不明の男の保護を引き向け、あろう事か学園生徒として普通に授業を受けさせるとあっては、いくら愚鈍な者でも何かの陰謀を想像せずにはおれない。


それも、その男。口先は達者だが魔法はからっきしという学園始まって以来の大問題児であった。


が、ルドルフは競技大会にてそいつに負けた。魔法うんぬんではなく、単純なバトルセンスの差に屈したのだった。更に辛酸を舐めさせられた相手が、今自分の今際の際に現れ、命を救ってくれた。

それも、行方不明と言われたマリア教諭を隣に引っさげて。


この嫉妬でもない。感謝でもない。この渾沌無形な気持ちに名前を付けるとすればなんだろうか。

胸に小さな針を指したような、腹の底がひっくり返るような……


「よっ坊ちゃん、無理せず逃げた方がいいぞ?」


赤黒い空に白銀の髪を靡かせ、真紅の瞳でこちらを見たヨハンはボロボロの制服と血の跡で全身を包んで、剣を奮った。黒い人影は一刀のもとに切り伏せられる。

彼の雰囲気は三、四日前の大会とはまるで違っていた。

それは、彼の身体に絡みつく半透明な黒蛇に起因するものなのか。それとも、何か別の理由があるのかは分からないが、声をかけるのを忘れていた事を今になって思い出すほど、圧倒されていた。


隣に立つマリア――かなり雰囲気が違う――がルドルフの周りに武骨な大剣を突き刺してバリケードを展開させていた。


「ある程度はマシだから」とだけ、マリアは言った。


剣の隙間から覗く彼女はまるでヨハンと長年連れ添った相棒のような、はたまた恋人のような雰囲気と絶妙な立ち位置で黒い人影へ向き直った。


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