表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BBS―魔物に取り憑かれました。魔力全部喰われました。でも使役しました―  作者: 木村アキエル
一章三節 否応なしに、彼等の苦難を蜜の如く啜る。
25/67

お墨付き共


長い話になると前置きをした後、ヨハンは一呼吸置いてゆっくりと語り出す。


「ちょうどマハが、課外学習に学園外に出た時だ。ユユと一緒の班だったらしいから、そこは分かるだろ?


そう。そして、列車事故が起きた。まさかそんな事が起きるなんて夢にも思わなかった。


神都オルケアトスに行く途中の列車で、ちょうど旧帝国領に差し掛かる手前の森林地帯だった。


突然、天地が逆転したみてーな衝撃が列車を丸ごと大破させた。

そこで、えーっと。俺は鉄筋に腹貫かれて地面に縫い付けられてて動けなかったんだ。そこに通りかかったのがマハだった。


単純にラッキーだった。普通なら即死でもおかしくないしな。それに加えてマハは回復魔法のエキスパートときた、自分の強運さに感謝だ。


その後、連絡手段も無く、マハの性格上見捨てたりも出来ずってな感じで少し行動を共にした。


俺の傷が完治しかけた時、問題が起きた。マハが魔物に取り憑かれていた事が発覚したんだ。

いわく、列車事故。その時から少しずつ体調を崩していってたらしい。


正直見るに堪えないレベルでみるみる衰弱していった……」


「もういい」ディアナがヨハンの言葉を無理やり遮った。


「え?」

「もういいと言ったんだ。ヨハン。見るに堪えないだ? あたしはそんな半分以上ウソで塗り固めた話の方が聞くに耐えないのだが?まあ――」


ディアナは脚を組み替えて、ヨハンを睨みつけた。


「――代わりに言ってやる。元々マハの身体にとり憑いた神獣(アギア)をお前が自分の身体に移植した。そういう事だよ」


ヨハンは(うつむ)いた。その額に二つの視線を感じていた。一人はマハと、もう一人はユユである。


「お言葉ですがディアナ様」白い軍服の麗人、シグレが口を出す。

「シグレ、不敬だぞ」


キースの言葉をディアナは片手で制した。


「よい。続けろ」


「はっ。此度の件、神獣(アギア)の事で我々はこちらへとやってまいりました。神獣(アギア)は生きる天災、その姿形。生物の造形にあらず、異形と異常を兼ね備え、天変地異の極地だと私は教えられております」


シグレはベレー帽からはみ出した髪を直して再び口を開く。


(まこと)に光栄の極みではありますが、本来であれば、上官であるキースはともかく、私などをこのような場に呼ぶなど有り得ぬ事。元帥(げんすい)である、ヘンラー・リーブス。及び大軍師シリウス・タイラーこそが、この場に相応しいかと。ましていくら当事者と言えど、学園の生徒など……しかもそちらの銀髪赤目の男性にいたっては魔力の反応が余りにも薄い」


「ねえちょっと、言い過ぎじゃない?」


マハがくぐもった声でそう言って、シグレを睨みつけた。

するとシグレは「うっ」と少したじろぐ様子を見せる。


「わ、私は彼ら生徒を巻き込むのは反対だと言いたいのです!」


「シグレだっけ? あまり歳変わらないと思うけど?」ヨハンが更に横槍を入れた。

ヨハンは継いで、


「自分が少数派の選ばれた人間だと思ってるだろ? その歳で軍役とは畏れ入る。でもな、結局大人ぶっててもガキはガキ、本質の所は俺らと変わらねえのよ」


「……知っているような口を聞く」黒と真紅の瞳がヨハンを睨んだ。

「知ってんだよ」


ディアナが手を叩いた。


「はいはい、そのガキとガキの言い争いをさせに来たんじゃないんだよ。いいか? 神獣(アギア)が現れたんだ、こんな狭い所で言い争っている場合じゃない。これは決定事項であって話し合いの場じゃない。お前達は神獣(アギア)を見た事があるか? え? オルランド?」


「……いえ、これまで一度も」


見た目的には最年長であるオルランドは、ゆっくりとかぶりをふりそう答えた。


「そう。こいつですら見た事がないんだよ。現物を見て体験してるやつと、話だけ聞いて妄想膨らませてる奴。どっちが役にたつ? どの道短期決戦、前者一択。まして出現地帯は夜の海(マク・サブル)大人数で押し寄せれるような転送陣(ポータル)でもねえ。少数精鋭カチコミで決まりだ」


ディアナは机を強く叩いた。ガラス製の天板は粉々に砕け散り、その欠片が光を反射して煌めいた。


「安心しろ。ここにいる生徒達は強いし伸び代抜群。生徒会長のお(すみ)付きだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ