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BBS―魔物に取り憑かれました。魔力全部喰われました。でも使役しました―  作者: 木村アキエル
一章二節 迷い込み、秘匿された真実に触れた時、始まりの鐘は鳴る。
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クリスタル・グランデ


眠るクロシェは穏やかで優しい面持ちだった。

まるで直前の騒動などまるで気にも止めていような。


「クロシェが、私達に記憶見せていたって……事?」


「そういう事だろな。それもかなり昔の。多分一度あった文明が滅びる前の世界みたいなやつだ」


ヨハンは映像として記憶したこの部屋と、現実のこの部屋の違いを――劣化具合を見比べた。


壁の()ち方や自然の侵食具合からして明らかに大昔の事だ。

一部鉄の壁が見えているが、その(ほとん)どが土に侵食されて、もはや普通の大空洞のようになっている。


古代文明(ロストエイジ)って事?」

「信じられないけど」

「じゃあ、あの子は?」


ヨハンはゆっくりと、氷に閉ざされた少女に近づいた。映像の時そのままで安らかに眠っていた。


「多分、何百年もここで一人眠っていたんだと思う」


ヨハンは氷に触れた。不思議と冷たくなかった。


「ん?」圧倒的な違和感にヨハンは首を傾げる。


「え、なに?」

「いや、この氷。冷たくない」


この部屋は白いモヤがかかるほどで、思わず身震いしてしまうほどに寒いのだが、今触れたクロシェの氷はそれとは全く異質で、透明な鉱石に包まれているような――いや。巨大な水晶の根元で眠っている。それはまるで――


「魔石……」ヨハンがそう呟く。

「魔石?」マハが困惑の表情で反芻(はんすう)した。

そして、継いで疑惑の声を投げかける。


「まさか、こんな大きな魔石があるわけ――」マハが一瞬だけ止まった。

そして、天井を見上げた。

巨大な魔石の柱だ。ヨハンもマハもこの柱を知っている。


マハが震える声で、まるでうわ言のようにこういった。


「うそっ? 絶対領域の守護石(クリスタル・グランデ)? ここは学園の地下?」


アドラスシア魔法学園。広大な敷地と木々に囲まれた世界有数の教育機関。学舎の真ん中を突き抜けるように巨大な水晶の柱、通称絶対領域の守護石(クリスタル・グランデ)がそびえ立っている。

昨日も今日も明日も、何年も変わらずに。

その根元に一人の少女が眠っているのも知らずに。



「結構まずくないです?」

「控えめに言っても絶体絶命って感じだな」

「無駄口叩かない二人共」


夜の海(マク・サブル)に突如現れた大量の回空魚(フォロル)に襲われ、三人は命からがら切り抜けたのだが、そこで現れた謎の飛来生物により一行は撤退を余儀なくされた。


「あれを生命体と呼べるのは怪しいけど、まあ謎の生命体だわな」


フェイドアは、緊張を感じさせない口調で爽やかに言ってのけた。

大きな一つ目で脂肪の塊のような球体の生き物。


「今まで見た中でベストスリーくらいのキモさですぅ……」


「グ……ゴ……オ……エ」


それが先ほどから声を上げながら徘徊している。どこに口があるのかと尋ねたくなるが、そう悠長(ゆうちょう)な事も言っていられない。


三人を苦戦させた回空魚(フォロル)の大群を、あのおどろおどろしい肉塊(にっかい)が一瞬で消し炭にしたのだ。



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