表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BBS―魔物に取り憑かれました。魔力全部喰われました。でも使役しました―  作者: 木村アキエル
一章二節 迷い込み、秘匿された真実に触れた時、始まりの鐘は鳴る。
17/67

星の生命体



ヨハンは肩を一瞬だけびく付かせた。

「ん?どしたの?」とマハが尋ねる。


「いや、なんだろか。寒気?」

そう言ってヨハンは腕を組んで肩をこわばらせた。


クロシェが首を(かし)げる。

「無事? ディア」


あれから、色々な景色に場面転換してその全てを三人で過ごした。魔物討伐や森林探索。

今の現状が、何を目的としているのか全くもって意図が掴めない。


クロシェは相変わらず、ヨハンの事をディアという人物と勘違いしており、それはヨハンがいくら言っても全く改善されなかった。


なので、

「ん、ああ。大丈夫だ。それよりクロシェ、ここは?」今の彼はクロシェにとってディアなのだ。


「ラボ」


と短く彼女は答えた。

周りは鉄で出来た様々な設備があった。一体何に使うのか、薄いノートのような物に表示されている言葉は何を意味しているのか。


クロシェはそんな部屋の真ん中にある椅子にこしかけた。


向かいには水槽が置いてあり、その中で小さな球体の何かが鼓動していた。

クロシェはそれをじっと見詰めている。そして時折ノートに何かを書き込んでいる。


恐らく経過観察なのであろう。

そう思い黙って見ていると、マハがおもむろにクロシェの隣まで歩き、声をかけた。


「ねえ。クロシェ、これは?」

「星から作った」


「えーっと、それってどういう」

「少しだけ借りて命を吹き込んだ。星のエネルギーを」

「ははは、なるほど……」


水槽の反射から見えるマハは、笑みを浮かべて頬を人差し指で掻いていた。

ヨハンはその光景を腕組みしながら眺めていた。絶対に分かっていないな。そう思いながら。


「アギア」

「え?」

「ディアが名付けた。アギア」


アギアと、マハは名前を反芻(はんすう)し、水槽をじっと見つめていた。何故か学園の服を着ているクロシェとマハは、隣りたって一つの物を観察する姿が友人同士のように見えた。


「この子は生まれてどれくらい経つの?」

「一ヶ月」

「へぇー、まだ赤ちゃんだね」


髪が揺れて向かい合い、そしてまた水槽へと顔を移す。



突如、赤い光が点滅し部屋全体を警告色に染め上げる。

けたたましい音がなり、地響きがした。

いつの間にか水槽は破壊されており、その中にいたアギアも姿を消していた。

ラボの壁や、先ほどまで整えられていた書類などは散乱していた。


「なんだ!?」ヨハンはバランスを上手く整えながら、辺りを見回した。

マハは突然の事に尻餅をついていた。

クロシェは直立不動で割れた水槽を見つめていた。


「マハ大丈夫か?」

「うん、また場面転換みたいだね」


クロシェは無言で再び歩き出した。扉に手をかけて、その先の廊下へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ