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AWAKE

世界を変えたいと願う、アナタに贈ります。

今日、俺は死ぬ決意をした。


誰も居なくなった夜の屋上で、俺は迫り来る死へのドアを叩く事への迷いを捨てた。

あと一歩…そう、あと一歩を踏み出せば、俺は確実に死ぬことが出来るだろう。今思えば、なんとつまらない人生だったのだろう。我ながら笑えるほど意味もない命だったきがする。元々仲の悪かった両親は、ケンカの末離婚。その後母親に引き取られたものの、俺は祖父母の家に預けられ母は新しい男との間に子供を作り家を出て行ってしまった。


そんな俺を祖父母は大事に育ててくれたものの、数年前に死んだ祖母につづき、祖父までもが先々日この世を去った。

何もかもを失った俺は、最後の心の支えだった幼なじみ献彼女だった里美に会いにいくも、家の前で浮気相手らしき男と居るところバッタリと出会ってしまい、自分との恋が既に終わっていた事を悟らざるえなくなった。しかもその浮気相手が今まで親友だと思ってたやつだったなんて、馬鹿らしくて笑えるぜ。そりゃあ、部活の合宿が続いてなかなか会えなかったのは悪かったとは思うけどさ………ここまで裏切られるとはおもわなかった。


さて、回想の時間は終りだ。こんな辛い今に現実逃避するぐらいなら、この世とのケリをつける方がよっぽど良い。さらばわが人生!もう会うことも内だろう!









『――本当にそれで良いのかい?』


―!?


不意に背後から声をかけられた俺は、慌てて後ろを振り向いた。


しかし、そこには誰も居ない。


「違うよそこじゃない、もう少し視線を下」


俺は恐る恐る下へと視線を移動させる。するとそこには……


―猫!?


「なんで猫が居んだ!?」


「…猫が喋っちゃいけないのかい?いちいちうるさいガキだねぇ〜」


そう言いながら猫は後ろ足で上手に耳の後ろを書いた。


「…それは悪かったな。生憎俺は猫と話したことなんか無いもんでね」


「そんなの当たり前だ。お前はバカか?」


――コイツ…マジで殴りたい。


猫との対話に苛立ち始めた俺は、このムカつく猫に話を試みることにした。


「んで、その猫さんが俺になんの用なんでしょうか?」


「そうだねぇ…強いて言えば、このつまらない現実に目が覚めた君に、この世界を造り直す方法を教えにきたのだよ誠一郎くん」


―!?こいつ、なぜ俺の名を!?


すると猫はそんな俺の内心を察したのか、バカにしたように笑い始めた。


「ククククク…君はどうやら心底驚いているみたいだねぇ。簡単な話さ。僕は悪魔なんだよ」


「あ〜はいはい、悪魔ね」


「おや、今度は期待外れな反応だね」


―猫が喋ってる次点でもう驚きなんか無いっつうの。この勢いで天使でも死神でもなんでも来いだ!……出てきたら嫌だけど。


「まあ、そんなことはこの際どうでも良いや。今日は君の力になりたいと思ってね」


「……俺、もうすぐ死ぬんですけど?」


「復讐はしたくないかい?この世界に…」


「はぁ!?」


――なにをバカな事を言ってるんだ、こいつ。


「どうやら君は僕をバカだと思ったのかもしれないが、僕は大まじめだよ」


――んなことを言われても、いまいちピンとこねぇし…


「この世界には沢山の闇が隠れている。虐め、虐待、引きこもり、ニート、そして浮気や裏切り。こんな世の中を変えたいと願う人がどれだけいると思う?」



猫はそんな俺を真っ直ぐに見つめながら語った。


「そりゃあ、そんなことを考えなくはないけど…」


だが正直今は恨みと悲しみ、そして諦めがこころの中を渦巻いていて、こころが押し潰されそうなのである。


「それならコレを飲んでみると良い」


そう言うと猫は、小さな瓶を出した。


――というかどこから!?


俺はなにやら怪しい瓶を手に取る。純粋に、自称悪魔が寄越したこの液体にどんな力があるか興味が湧いたからだ。


「これを飲むとどうなるんだ?」


猫は心底楽しそうに言った。


「飲んでみれば解る」


「……なるほど。ゴクッ、ゴクッ」


とうとう好奇心に負けた俺は、この液体を飲む事にした。


液体は身体中を駆け巡る。


少し経つと、激しい頭痛と喉が焼けるような痛みに襲われた。


「――!?なんだ…これは!?」


痛みは激しくなり、視界が霞み始めたとき、その猫がたった一言だけ俺にこう言った。


『――目が覚めれば』


と……。

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