第6話 謎
「誤解しててすまなかった」かぁ…。
教室に向かう途中、俺は一言そうつぶやいた。
北山先生が言った言葉の意味を考える。
桜倉さんと北山先生…。
二人の身に何があったのだろうか?
気にはなるが、もちろん真実はわからない。
まぁ、いいか。今度、優紀さんと話した時にでも聞いてみよう。
無理やり自分を納得させて、俺は教室に入った。
授業は残りあと二時間…。
よし、頑張ろう。
***
プルルルル…。
電話がつながるまでの待ち時間がとても長く感じる。
優紀さんは電話にでてくれるだろうか。
そう考えるとなんだかドキドキする。
中庭に置かれたベンチに座りながら、俺は優紀さんが電話にでるのを今か今かと待った。
「あっもしもし。早見君?」
数十秒後、彼女の声が聞こえた。
「もしもし、優紀さんですか?約束通り手紙渡しましたよ」
自然と俺の声も弾む。
「そう、ありがとう。北山先生なにか言ってました?」
「えぇ、誤解しててすまなかったって言ってましたよ」
「フフッ…。誤解ねぇ…。それだけ?」
「それだけですけど…。あの~北山先生と優紀さんってどんな関係だったんですか?」
俺は心に残るわだかまりを解決するために思いきって直接聞いてみることにした。
「何って…。知りたいの?」
「えぇ…。良ければ教えてください」
「知ってどうするの?」
「えっ…。べつにどうもしませんけど…。ただ、気になるっていうか…」
「そう…。なら早見君、今から緒海郵便局前に来てもらえるかな?」
「えっ…。今からですか…?」
「嫌なら別に来なくてもいいわよ」
「あぁ…。い、行きます」
「じゃあ決まり。待ってるからね」
電話はそこで切れた。
携帯を通じてのやりとりではあったが優紀さんの雰囲気が前に会った時とはなんだか違うような気がした。
二人の関係…。
聞かなければ良かったのだろうか?
緒海郵便局かぁ。
自転車を使えばここから約20分くらいの距離になる。
俺は行くと言ったんだ。
行かなければならない。
駐輪場に向かって俺は歩きだした。