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第3話 お願い

「もうすぐ待ち合わせの時間…か」

緒海郵便局の前で俺は時計を気にする。

待ち合わせ場所に指定された緒海郵便局はもうそろそろ今日の営業が終わる時間帯だ。

でも、局内にはまだ数人のお客さんがいた。

暑中見舞いの葉書はがきでも買っているのかな…?

そんな疑問が頭の中に浮かんだ。

昨日、彼女からお願いがあると言われた時はとても驚いた。

俺はてっきり落とした手紙を渡してそれで終わりだと思っていたからだ。

でも違った。

そして、彼女はこう言った。

「明日、午後4時30分にここに来て下さい」と。

俺は敢えて理由は聞かなかった。

いや、厳密に言えば聞く勇気がなかったのかもしれない。

その時、俺はいつもの鈍男に戻ってしまっていた。

自分から刺激的な日々を求めてはいるが、心の奥ではその刺激に抵抗がある。

そう思うとつくづく自分は複雑な人間だなと思った…。

「ごめんなさい。待ちました?」

赤ポストを見ていた視線を声の主の方へ向ける。

そこには、昨日の彼女がいた。

「あっ…。いいえ…。俺もさっき来たんです」

「ふふ…。そうですか」

一言話すだけでもドキドキする。

とりあえず、また会うことができて良かった。

「来てくれてありがとうございます。実は渡したいものがあって…。これなんですが…」

そう言いながら彼女は俺に青色の手紙を渡した。

昨日、見た手紙とはまた違うもののようだ。

「手紙…。ですか…?」

「はい、これを緒海商業高校の北山先生に渡してもらいたいのです。お願いできます?」

「ええ…。いいですよ」

俺は二つ返事で答えた。

北山先生に手紙を渡す。別に難しいことではない。

「ありがとうございます!では、頼みますね。約束ですよ?」

「任せてください。必ず渡しますよ」

明日、北山先生の担当する授業がある。その時、渡そう。

俺は心の中でそう予定をたてた。

「それと、これ私の携帯番号です。北山先生がなんて言ってたのかまた今度、聞かせてください」

そう言って彼女は携帯番号が書かれた紙を俺に渡した。

「わかりました。じゃあ俺の携帯の番号も教えますね。ちょっと待ってください。今、紙に書きますから…」

「えぇ、助かります。そういえば自己紹介がまだでしたね。私、桜倉優紀さくらゆきといいます。それじゃあ私、この後、ちょっと用事があるので、先に帰りますね」

「あっはい、手紙渡したら電話しますね」

「はい、電話待ってます」

そう言って優紀さんは帰って行った。

俺はその後ろ姿をずっと見ていた。


この青色の手紙に何が書かれているのだろうか。

少し気になった。

でも、もちろん中身は見ない。

このままの状態でしっかり北山先生に渡す。

それが、優紀さんと交わした約束だからだ。



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