第27話 悩み多き世界の中で
「はぁ…。ダメだ…。電話するのはまた今度にしよう」
そうつぶやくと俺は手に持った携帯をポケットにしまった。
すぐにでも電話して聞いてみようと思ったのに。
でも、「今、電話する」という勇気がない。
もちろん本当にイギリスに帰るのかどうかを早く知りたい。
でも、電話をする前に知りたいことがあるのも事実だ。
「そうだ、明日北山先生に優紀さんのこと聞いてみよう。何かいろいろ知ってるみたいだし」
そう決めた俺は足早に家に帰った。
そう言えば今日の晩ごはんはおでんらしい。
今からでも楽しみだ。
***
次の日の朝、朝御飯のパンとコーヒーを勢いよく胃に流し込んで俺は学校へと向かった。
12月に入り寒さも厳しくなってきた。
ここ緒海市は一年を通じて比較的温暖な気候に恵まれているが、今日はことのほか寒さが肌にしみる。
朝のニュースだと今日は今年一番の寒さになるらしい。
チェックのマフラーを勢いよく首に巻いて、俺は学校へと続く横断歩道を渡った。
その時だ。
「お~い!おはよう」
後ろで俺を呼ぶ声が聞こえる。
振り向くとそこには吉田が立っていた。
「哲ちゃん、勉強した?今日から期末テストだよね。俺、自信ないわぁ」
「えっ!?期末テスト?あっ…」
なんてことだ。
すっかり忘れてた。
いや、正確には明日からだと思ってた。
もちろんテスト勉強なんてほとんどしてない。
「き、今日のテスト科目って何だった?」
焦る気持ちを抑えながら吉田に聞いてみる。
得意な科目ならなんとかなる。
「今日は…。ちょっと待ってね…。あぁ、歴史と保健体育と英語だよ」
「はぁ…。そうかぁ…」
歴史と保健体育は幸いにも得意科目だ。
しかし、英語はまるでダメだ。
赤点からの補習コース確実だ。
でも、良いこともある。
期末テストということは午前中には授業が終わる。
ということは北山先生に早く会うことができる。
たぶん今日も職員室にいるだろう。
「そうだ!そうだ!哲ちゃん、今日学校終わったらゲーセン行こうよ!なんでも例のUFOキャッチャーの景品が新しくなったらしいよ」
急かすように吉田が俺にゲーセン新情報を伝える。
「あぁ、わかった行くよ。でも帰りちょっと寄るとこあるから。先にゲーセン行ってて」
「よし決まりね。でも、その前にとりあえず今日のテスト頑張ろうね」
「そうだね…。わかった」
吉田の言うとおりだ。
とりあえず今は期末テストに集中しよう。
期末テストに優紀さんにUFOキャッチャーの景品…。
今日は考えないといけないことがたくさんある。




