第19話 決戦は緒海神社?? 前編
「はぁはぁはぁ…」
自転車のペダルを漕げば漕ぐほど息が乱れていく。
神社へ続く道は長い坂道の一本道になっている。
今日は何かイベントでもあるのか神社へ続く道はいつも以上にたくさんの人が行き来している。
緒海市は別名「坂町」とも言われている。理由はもちろん坂が多いからだそうだ。
とくに神社やお寺といったものは坂の上にある傾向が強い。
なんでもその昔、海運事業で栄えた商人たちが航海の安全を祈って神社仏閣に莫大な献金をした。
そして、資金豊富になった神主さんやお坊さんたちはこぞって風光明媚な丘の上に新たな神社仏閣を造営したらしい。
立派な建物が地元にたくさんあるのは嬉しいのだが、こうやって用事がある時はとても行くのがしんどい。
でも、そんなしんどさもこの坂の上に優紀さんがいるのだと思うと少し和らいだ。
「よし、あと少しだ。頑張るぞ!」
俺は全力でペダルを漕ぐ足に力を込めた。
「あ~!哲雄君こっちこっち。一応、時間通りね」
優紀さんがニコニコと笑いながら手を振っている。
「はぁはぁ、急いで来たんですよ…」
横に自転車を停めながら俺は一言そう言った。
「うん、そうgood!それでこそ私の相談相手よ。来てくれてありがとう」
「あっ…。そんなありがとうだなんて…。俺嬉しいです!」
久しぶりに優紀さんからありがとうと言われた。
こんな嬉しいことはなかなかない。
「そ、それで…。用事というのは…」
「あっ、そうそう。哲雄君、今日は何がある日か知ってる?」
「えっ?今日ですか…?」
今日…?今日はなんの日だろう。
ちなみに今日は俺の家で飼ってる犬の誕生日だ。
名前はポチっていう。
とても人懐っこくて賢い犬だ。
だから、皆に誇れる我が家の家族の一人なのだ!
……。でも、犬の誕生日と今、俺がいる緒海神社はなんの関係もない。
う~ん、しかし犬の誕生日以外に他に思い浮かぶことがない。
「今日は俺の家で飼ってる犬の誕生日です!」
一応、優紀さんにその情報を伝えてみた。
「……。へ~。おめでとう。でもそんなことどうでもいいわ」
優紀さんは冷たい目で俺を見てきた。
「やっぱり違いますか…。でも、他に思い浮かぶことがありません」
俺は正直にそう言った。
「ふ~ん、そう。それじゃ教えてあげるわ。その前に今日はなんであなたを呼んだかわかる?」
「う~ん…。正直に言います。わかりません」
「ふふ…。実はね今日はあなたに倒してもらいたい人がいるの」
「えっ!?」




