第18話 UFOキャッチャーに願いを込めて 後編
プルルル~!
テディベアをGETできると思った瞬間、ポケットから携帯電話が鳴り響いた。
「えっ!?このタイミングで?」
即座にそんな言葉が脳裏をよぎる。
しかし、でない訳にもいかない。
もしかしたら何か大切な用事なのかもしれない。
俺はそっとレバーから手を放した。
着信画面を見る。
登録してない番号だ。
ますます気になる…。
「はい、もしもし…」
不安になりながらも俺は電話にでた。
「おぉ、哲雄か。父さんだ。いや、携帯が便器に落ちてな。今、会社の同僚の携帯からかけてるんだ。帰りに携帯ショップに寄るから母さんに帰りが遅くなると伝えてくれ」
「父さんかよ!」
俺は一言大声でそう言うと勢いよく携帯を切った。
まさか、そんなどうでもいい用件で俺に電話をかけてくるとは…。
「ハッ!?テディベアは!?」
急いでクレーンゲーム機の状況を確認する。
「あぁ…」
声にもならないうめき声がでる。
案の定、テディベアは下に落ちていた。
掴んだ後の微調整が足りなかったのがこの結果の根本的な要因だ。
あの時、電話が鳴らなければ…。
後悔が後悔を呼ぶ。
「哲ちゃん…。残念だね」
落ち込む俺を励ますように吉田が話しかけてくる。
「吉田…。それ以上何もいうな。状況は理解している」
今の俺に言葉なんて必要ない。
今、目の前に広がる現実が全てなんだ。
プルルル~!
また携帯が鳴り響いた。
どうせまた父さんだろ。
そう思ってくるとなんだか無性に腹が立ってきた。
「なんだよ、もう電話してくんなよ父さん!!」
電話にでるなり俺は怒りに任せてそう叫んだ。
「はぁ!?何よいきなり。私はあんたの父さんじゃないわよ!私よ。桜倉優紀!」
「へぇ、あっ…。優紀さん!?ごめんなさい。ごめんなさい。てっきりまた父さんかと思って…」
最悪のタイミングだ。
まさか、優紀さんだったとは…。
いきなり彼女を怒らしてしまった。
次に会った時、殴られるかもしれない。
「とりあえず私はあんたの父さんじゃないからね!まぁ、この話は置いといて…。哲雄君、今どこ?」
「あっ…。今ですか?今、東緒海公園近くのゲームセンターですけど…」
「そう、good。良かった。今から15分以内に緒海神社に来て。理由はあとから話すから。お願いね!」
そう言い残して電話は切れた。
なぜ、緒海神社なのかはわからないが、優紀さんからの召集命令だ。
俺は行かねばならない。
幸いにも緒海神社はこの近くだ。
「吉田!ごめん。用事ができた。ちょっと行ってくる!」
「あぁ、わかった。よくわからないけど頑張ってね」
吉田の声を背中で聞きながら、俺はゲームセンターを後にした。




