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第2話 緒海郵便局

緒海おうみ郵便局。

明治23年に開局して以来、ずっとこの場所にある地方郵便局だ。

地元の人が多数勤務していて、地域のみんなに愛されている。

建物は古く今にも壊れそうだが、そのたたずまいが逆にレトロな雰囲気をだしており、ここでしか買えない地方限定グッズも多数販売されている。

そして、この限定グッズを買い求めてここまでやって来る観光客も多いという。

俺は今、この緒海郵便局の前に立っていた。

「おや、早見君じゃないか。葉書はがき出すのか?」

誰だと思い後ろを振り向く。

そこには近所に住む佐武郎さぶろうおじさんがニコニコしながら立っていた。

「こんにちわ。佐武郎おじさん。今、ある人を探してまして…」

俺はおじさんにこれまでの経緯を説明した。

「なんじゃ、人探しか。う~む、黒髪の美しい女性か…。手がかりが少ないの」

佐武郎おじさんは大きく首をかしげた。

「あの…。髪型はショートカットです。浴衣が似合いそうな女性で…」

俺はなんとか彼女の情報を伝えようとして、身ぶり手振りで訴えかけた。

「黒髪でショートカット、そして浴衣が似合うか…。それってあの女性じゃないかの?」

「え?」

期待を込めて振り返る。

「あっ…。いた」

俺は一言そうつぶやいた。

間違いない。あの女性だ。

彼女は郵便局の入口横に設置してあるポストの辺りをキョロキョロと見ている。

「おじさんありがとう。手紙渡してくるよ!」

俺は急いで彼女の元へ向かった。

こんなに急いだのは久しぶりだった。


「あの…。手紙落としませんでした?」

彼女の肩を叩きながら、そう話しかけた。

彼女は一瞬、ビックリした表情を浮かべてはいたが、俺が手に持った手紙を見ると驚きの表情が微笑みへと変わった。

「あっ、探してたんです。その手紙。私、あなたとぶつかった時に落としたんですね。わざわざありがとうございます」

少し顔を赤らめながら彼女はそう言った。

その時、照れた顔もとても可愛いなと俺は思った。

そして、手に持った手紙を彼女に返した。

「もしかしてあなた緒海商業高校の学生さん?」

少し間をおいた後、彼女は俺にそう聞いてきた。

「えっ…。そ、そうですけど」

「やっぱり!制服を見てすぐにわかったわ。北山先生まだいる?」

「北山先生…。いますよ。今は2年の情報科の担任をしていたような…」

「え~まだいるんだ!ねぇねぇちょっとお願いがあるんだけど…聞いてもらえるかな?」

お願い…。こんな美人の女性のお願いを断れるわけがない。

「は、はい。いいですよ」

この時の俺はいつもみんなから言われているような鈍男どんおではなかった。

そして、彼女のお願いを通じて俺の中の「何か」が少し変わった。



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