第17話 UFOキャッチャーに願いを込めて 前編
秋も過ぎ去り季節はもう冬。
街中を歩くと冬の装いをしている人も多くなった。
今日は学校が休みということもあり、俺は友達の吉田と共にゲームセンターの前に来ている。
目的は…。そうUFOキャッチャーだ。
あの箱の中に入っているテディベアのぬいぐるみが心から欲しいのだ。
なぜ欲しいのか…。
一言で表現すると「そこにテディベアがある」からだろうか。
しかし…。なかなかGETできない。
俺のテクニック不足が根本的な原因なのだが、4000円以上つぎ込んで手に入れることができないというのはもはや異常事態だろう。
挑戦を初めて今日で3日目。
今日こそ手に入れるぞという気持ちを胸に秘めて、俺は吉田と共に店内へと入って行った。
***
店内は今日が日曜日ということもあり、賑わっている。
若者から中年のおっちゃんまでがゲーム機の前で一喜一憂している。
「哲ちゃん、もういい加減止めたらどう?取れない物は何回やっても取れないよ」
「いや、今度こそ俺は取ってみせる。見ててくれ、吉田!」
「はぁ…。俺、ジュース買ってくるから。適当に頑張ってね」
そう言い残すと吉田は自販機の方へと向かって行った。
ガチャン!!
勢いよく100円を入れる。
何としてもGETしたい。
そして、このテディベアを優紀さんにプレゼントしたい…!
そんなことを考えながら、俺はレバーを動かす手に全身全霊を込めた。
~30分後~
「あ~!ダメだぁ…!取れねぇ…」
俺はレバーを動かす手を下にさげた。
おしい、本当にあと少しで取れそうなのだ。
こうなってくると店側を疑いたくなる。
たぶん客に景品を取られるのが嫌なのだろう。
「哲ちゃん、もういいだろ。そろそろ帰ろうよ。ほら、俺の家でストリートフィアターでもしようよ」
3本目のジュースを飲みながら、吉田が俺にそう言う。
「いや…。待ってくれ。あと1回だけチャンスをくれ…!」
ここで挑戦が終わってしまっては後々後悔しそうだ。
俺は財布に残った最後の100円をマシーンに投入した。
ウィーン、ウィーン…。
良い。goodだ!
かなり良い動きをしている。
思わずレバーを操作する手に力が入る。
テディベアをしっかりと掴んだ…!
いける。
いけるぞ…!
思わず笑みがこぼれる。
その時だった。
運命の女神が俺に過酷な試練を与えたのは…。




