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第15話 秋の邂逅~俺が鈍男になった理由~放課後編

佐藤佳菜子…。

彼女と初めて話をしたのは、俺が小学校3年生の時だった。

話といっても他愛のない「早見君。消しゴム落としたよ」みたいな感じだったと思う。

それから今まで、たま~に話をする程度でお互いを強く意識することなんてなかった。

だから今、「あなたに話があるの」と言われて俺は正直、とても驚いている。

それもあの二人のケンカがあった後にだ。

そういえば、ケンカの原因も佐藤さんだったな…。


いったい何の話だろう…。

まぁ、ついて行けばわかるか。


「早見君、あなたに話があるの。ちょっと来て」

この一言に誘われて、俺は佐藤さんに言われるがまま彼女の後を追った。


***


「よし…。ここなら誰もいないわね」

満足げな表情で彼女は一言そう言った。

俺が呼ばれたのは体育倉庫裏。

放課後という時間帯もあり、たしかにここなら誰もいない。


「それで…。佐藤さん、話というのは?」


「今日、あなたの誕生日でしょ?おめでとう」


「誕生日!?あっ!たしかにそうだ…。忘れてた」

今日は俺の誕生日だ。

他のことを考えてて、すっかり忘れてた。


「早見君、これ…。あげるわ、プレゼント」

そう言いながら、佐藤さんはそっと俺に可愛い包装紙に包まれた箱を渡す。


「えっ…。た、誕生日プレゼント?俺に?ありがとう!嬉しいよ!」

初めてだ。お母さん以外の人から誕生日プレゼントをもらったのは。

女の子からプレゼントを貰えるということが、こんなに嬉しい事だなんて思わなかった。

彼女に呼ばれた理由がわからなかった分、喜びも3倍だ!

「家に帰ってから開けてね。恥ずかしいから」


「う、うん。わかった、帰ってから開けるよ。本当にありがとう!」


「それじゃあ、またね。私、このあと塾に行かないと行けないから…」

そう言って彼女は帰って行った。

まさか、あの佐藤さんからプレゼントを貰えるなんて。

この箱の中に何が入ってるのだろうか?

とても気になる。

でも、このワクワクは帰って開けるまでとっておこう。

俺は自分にそう言い聞かせた。

家に帰るのが楽しみだ。



だが幸せのあまりその時、俺は気づいてなかった。



吉倉君がこっちを見ていたことに。



***


ガチャ!。トットットッ…。ドン!

俺は家に帰って、すぐに自分の部屋に飛び込んだ。

もちろんプレゼントの中身を見るためだ。


カシャッ…。ゴソゴソ…。

「あっ!写真たてだ!」

プレゼントの中身は写真たてだった。

オシャレな雑貨屋さんで売ってるようなキラキラ光ってる感じのやつだ。

写真たてには付箋ふせんが貼ってあって佐藤さんの直筆で「好きな写真を入れて下さい」と書いてある。

こんなに嬉しいことはない…!

さて、何の写真を入れようか…。

迷うな…。

そう悩んでる時だった。


「哲雄~!帰ってるなら、ちゃんと返事しなさい!いるの~!ケーキ買ってるわよ~!」

母さんの声だ!


「母さんいるよ~。ケーキありがとう!今から下に降りるよ~」

俺はすぐに下の階へと降りた。


***


その時の俺は、瞬時に自分の興味が写真たてから母さんが買ってくれたケーキへと移っていた。


もし、すぐに写真たてを開けていたら…。


高校生になった今でも強くそう思う。


でも、俺は気づくのが遅かったのだ。


そして、気づかなかった。



写真たての中に佐藤さんが書いた「手紙」が入っていたことに。



そして、この俺の想い出ストーリーは「明日」という「終わり」に向けて加速していく。


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