第14話 秋の邂逅~俺が鈍男になった理由~昼編
これは俺が小学校6年生の時の話だ。
当時、俺はクラス委員長を任されていた。
今の自分からは考えられないことだが、その頃の俺はとても正義感が強くクラスの人気者でもあった。
もちろん鈍男なんて呼ばれてはなかった。
むしろ、先生からは「しっかり者」だと言われていた。
あの「出来事」いや、あの「事件が起きるまでは…」
***
「哲ちゃん!大変なんだ!ちょっと来てくれないか!」
「ん…!?どうした」
給食を食べ終わった昼休みの時間帯、俺は友達の裕くんから呼び止められた。
「吉倉君と間城君がケンカをしてるんだ!止めてくれないか?」
裕くんは俺を見つけた後、単刀直入にそう言った。
この二人がケンカかぁ…。
珍しいこともあるもんだ。
吉倉君と間城君は普段から仲の良い二人だ。
クラスの中でも人気者のグループに所属している。
ちなみに俺と裕くんもこの二人と仲が良い。
だから余計になぜこの二人がケンカをしてるのかが分からない。
いったいどうしたというのだろうか?
真相を確かめるために、俺は二人の元へと向かった。
「哲ちゃんが何をしにきたんだよ!」
ケンカ現場である理科室前に着くなり、吉倉君が俺にそう言う。
二人は殴り合いのケンカをしてるらしく、顔が赤く腫れていた。
「何っていったいどうしたんだ?二人とも。ケンカの原因はなんなんだ?」
「間城がなぁ、俺が佐藤さんのことを好きだっていうことを言いふらしてるんだ!秘密にしといてくれって言ったのに!」
「佐藤さんって同じクラスの佐藤佳菜子さん?」
「あぁ、そうだよ!」
吉倉君は怒りの表情で俺をにらむ。
佐藤佳菜子というのはクラスのマドンナ的存在の女子だ。
社交的で友達もたくさんいる。
それでもって可愛いくて、クラスの女子達の中心的存在だ。
もし、吉倉君の言ってることが事実なら、悪いのは間城君ということになる。
「いや、だからそれは誤解だって何回も言ってるだろ!俺じゃねぇよ」
「嘘つけ!このやろう!」
その言葉と共に吉倉君の強烈な右ストレートが間城君にとぶ。
このままだとどっちかが倒れるまで殴り合いを続けそうだ。
俺は全力でこの二人を止めに入った。
***
結局、二人の言い分はすれ違ったままケンカ別れのような形でその場は収まった。
本当に間城君が言いふらしたのだろうか?
でも、本人はそれは誤解だって言っている。
と言うことは言いふらしてる人は他にいる?
「う~ん、謎が謎を呼ぶ…」
放課後、そんなことをつぶやきながら俺は家に帰ろうとした。
まさにその時だった。
「ちょっといい?」
俺はふいに後ろから話しかけられた。
誰だろう。
そう思いながら、俺は後ろを振り向く。
そこにはあの佐藤佳菜子さんが立っていた。
そして、彼女はこう言った。
「あなたに話があるの」




