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第12話 東緒海公園にて 後編

「よし!優紀さんの手作り弁当も食べたし、午後からの四つ葉のクローバー探し頑張るぞ!」


こう宣言してから早くも3時間が経過した。


時計を見ると時刻はそろそろ午後5時。

楽しそうに遊具で遊んでた子供たちもぞくぞくと帰っていく…。

そんな子供たちの帰る姿を横目に見ながら、俺と優紀さんは見つかるという一筋の希望を胸に秘めて、四つ葉のクローバー探しを進めていた。

「哲雄君…。ないわね」

諦めの表情を浮かべながら優紀さんは俺にそう言う。

「いや、なんだか見つかるような気がします!あと30分頑張ってみましょう」

俺は優紀さんにそう言い返した。


無いと思うから見つからない。

あると思えば見つかる。

四つ葉のクローバーを探してる内になんだかそう思えてきた自分がここにいた。


「哲雄君…。ちょっと話してもいい?」


「えぇ!どうぞ!俺、絶対に見つけますよ!まだ帰りませんよ!」


「実は…。本当は四つ葉のクローバーなんてどうでもいいの!」


「は、はいぃぃ!?」

突然の優紀さんの発表に俺は少し気が動転してしまった。

それじゃあ、夕方まで一生懸命探した俺のこの努力はなんだったのだろうか。

「そ、そんな…。本気でそう言ってるんですか?」


「もちろん四つ葉のクローバーは欲しいと言われれば欲しいわよ!でも…。まさかあなたがここまで必死になって探してくれるだなんて思ってなかったから…。なんか、ごめんなさい」

そう言い終わると彼女は俺に向けてペコリと頭を下げた。


「でも…。じゃあなんで俺に四つ葉のクローバー探しを一緒にしようって言ったんです?」


「そ、それは…。あなたと一緒にいるきっかけをつくりたか…。じゃなくて!あ、あれよ。あなたを試したのよ、私のためにしっかり働いてくれる男かどうかをね!」

焦った表情を浮かべながら、驚くほどの早口で彼女は俺にそう言った。


「最初の方の言葉は聞き取れませんでしたけど…。と、とりあえず今日1日ここまで頑張ったんです。もう少し探しませんか?もちろん二人で」


ここで、諦めたくない。


その言葉が今の俺を支えていた。


「そ、そうね…。じ、じつは私も今、そう思ったとこなの。前言を撤回するわ。あなたって意外と負けず嫌いなのね」


「学校では鈍い男、略して鈍男って呼ばれてますけどね」


「負けず嫌いで鈍い男かぁ…。ふふっ…。哲雄君ってなんだかめんどくさいわね」


「そ、そんなぁ…。優紀さんそれはないですよぉ…」


こうして二人は再び夕方の公園で四つ葉のクローバーを探し始めた。



***


「哲雄君、今日はありがとうね。四つ葉のクローバー見つからなかったけど、なんだか楽しい1日だったわ」

公園からの帰り道、優紀さんは微笑みながら俺に向かってそう言った。

あの後、1時間ほど探したけど結局、四つ葉のクローバーは見つからなかった。

でも、実は最後の最後で俺はあるものを見つけることができた。

「優紀さん!これ見てください!」

そう言いながら俺はさりげなくポケットからクローバーを取り出した。


「………。なにこれ?二つ葉のクローバーじゃない。へ~こんな形のクローバーもあるんだ」

少し驚いた表情で優紀さんは俺の手のひらを見つめる。


「そう、二つ葉のクローバーです!実はですね。二つ葉のクローバーをふたつ見つけたのです。2+2は…」


「あっ…。4…。もしかして、これで四つ葉のクローバーってこと?」


「そうです!優紀さん!俺、四つ葉のクローバー?を見つけましたよ!」


「あなた私をバカにしてるの?」


「あ…。ごめんなさい。ごめんなさい」


あれ…??俺の予想してた反応と違う。

この二つ葉のクローバーを見せたらきっと彼女は喜ぶと思ってたのに。

まさか、怒らせてしまうとは…。


「あなたの想像力は無限大ね。罰としてこの二つ葉のクローバー、私がもらうわね!またね!哲雄君!」


「あぁ、待ってくださいよ~。いきなり走らないでください~。駅まで送りますよ~」


その時の優紀さんの表情を俺は見ることができなかった。


でも、今年のクリスマスイブの日。彼女は教えてくれた。



「あの時は嬉しすぎて少し泣いてしまった」と。



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