第11話 東緒海公園にて 昼編
四つ葉のクローバーを探し始めて一時間ほどがたった。
案外、すぐに見つかるんじゃないのかと思っていた俺の予想は大きく外れた。
意外と見つからないのだ。
もしかしたら、この公園内にはないのかも…。
そんな気もしてきた。
横に目を向けると、優紀さんは手を止めることもせずに一生懸命探している。
ここで俺が諦める訳にはいかない。
俺はそう自分を奮い立たせた。
「もうすぐ12時ねぇ…。よし!お弁当の時間にしましょう」
いきなりスッと立ち上がったなと思った瞬間、優紀さんは俺にそう言った。
「そうですね…。この近くにコンビニあるんで、そこで弁当でも買います?」
「買わなくても大丈夫よ。私、作ってきたから」
「作ってきた…?も、もしかして俺の分もあるんですか?」
「もちろんよ。ちゃんと二人分作ってきてるわよ。食べる?」
「あっ…。はい!もちろんいただきます」
とても嬉しいサプライズだ。
まさか、俺のために優紀さんがお弁当を作ってきてるとは…。
これは予想してなかった。
母さん以外の人が作ってくれた始めてのお弁当だ。
おいしく召し上がろう。
俺は心にそう誓った。
「このベンチで食べましょうか」
「そうですね。了解です」
どこにでもあるような公園のベンチ。
でも、ここが俺にとってかけがえのない場所になることは間違いない。
たぶん…。
カパッ。
俺は優紀さんから差し出された弁当箱を開ける。
ウィンナーに玉子焼きに唐揚げ…。
弁当箱の中は俺の大好きなおかずで埋め尽くされていた。
「美味しいかどうかはわからないけど。一生懸命作ったから…。不味いっていったら殴るからね」
「そ、そんな…。絶対に不味いなんて言いませんから…。では、さっそくいただきます!」
俺は勢いよく弁当を食べ出す。
最初、もし不味かったらどうコメントしようかなと思った。
でも、そんな俺の心配を覆すほどに優紀さんの手作り弁当は美味しかった。
「お、美味しいですよ。優紀さん!とくにこの唐揚げとか!」
「それ冷凍食品なんだけど」
「あっ!?ごめんなさい。ごめんなさい」
近づいてるようで近づいてない二人の距離。
でも、この「距離感」がなんだか幸せに感じられた。
他人から見れば何でこの二人、ボケとツッコミの漫才をしてるのだろうと思うかもしれない。
でも、俺にとっては幸せなひとときだ。
手作り弁当も食べれたし。
よし!午後からの四つ葉のクローバー探し頑張るぞ!
俺は自分にそう言い聞かせた。




