第10話 東緒海公園にて 前編
日曜日の午前9時すぎ。
今日の空は晴れ渡っていた。
吸い込まれそうな空の下、俺は東緒海公園に向かって歩いていた。
いつもと同じ日曜日。
でも、今日の俺はいつもと少し違う。
目的があるのだ。
優紀さんと四つ葉のクローバーを探すという目的が。
「あっ!こっちこっち~!」
俺に気づいた優紀さんが手を振る。
日曜日の公園内は思い思いのことをして過ごす人々でいっぱいだ。
その人混みの中で彼女はなんだか輝いて見えた。
「なんとか待ち合わせの時間内には来たみたいね。そこだけは褒めてあげるわ。でも女性を待たせるもんじゃないわよ」
「あっ…。ごめんなさい」
「この遅れは四つ葉のクローバーを見つけて取り戻してよね」
「あっ…。はい、頑張ります」
今日の優紀さんはいつにもまして辛口だ。
日曜日だからか?
そんなよくわからない問いが頭をよぎった。
でも、いい。
四つ葉のクローバーを見つけて彼女を見返そう。
「優紀さん!絶対に四つ葉のクローバーみつけましょうね」
「ふふっ…。どうしたの?いきなり大声なんかだして。もちろん頼りにしてるわよ。さぁ行きましょう。この奥の方にクローバーがたくさん生えている場所があるの」
こうして、二人の四つ葉のクローバー探しが始まった。
二人はどんどん公園の奥へと向かって進んでいく。
この奥には、草木が生い茂っているエリアが広がっていて、どうやら優紀さんはそこへ向かってるようだ。
「さて、哲雄君、ここで問題です!四つ葉のクローバーの花言葉はなんでしょう?」
目的地へと向かう最中に突然、優紀さんは俺にクイズを出してきた。
「えぇ!?四つ葉のクローバーの花言葉ですか??し、幸せとか…」
「はぁ?何言ってるの?ありきたりすぎる答えね。0点。もちろん違うわよ。次会うときまでには答えを調べといてね」
「あっ…。わかりました。調べます」
やっぱり今日の優紀さんは辛口だ。
俺は改めてそう思った。
公園に来てから10分ほど歩いただろうか。ここまで来ると遊べる遊具などもなく、人気は疎らだ。
比較的静かな場所だからか、寝転がって読書に勤しんでいる人も数人いた。
「哲雄君は右側を重点的に探してね。私は左側を探すわ」
「わかりました。さっそく作業に入ります」
俺は勢いよくポケットから100均で買った軍手を取り出した。
優紀さんにも軍手を渡そうと思った。
でも彼女はすでに自分で持ってきた軍手を着けていた…。
さすが、優紀さん、用意周到だ。
そんな彼女に俺が先に四つ葉のクローバーを見つけてプレゼントするんだ!
俺は自分にそう言い聞かせた。




