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恋のジンクス

作者: ホミー

 「なんで健人と私同じ高校通ってるのにこんなにしゃべらなくなっちゃったんだろうねー?」


 「そうだよなー。やっぱ異性出し思春期だし青春だし?」


 「何その悟った感じ。気持ちわるっ!」


 「今のは俺でもキモイと思った!別にお互い異性だからとか意識しないのにな」健人はそう言いながら注文したレアチーズケーキを食べる。健人が食べると同時に奈緒も注文したパフェを食べた。健人も本当はパフェを頼みたかったが、奈緒が先にパフェを注文してしまい、一緒の系統のものを頼んだらダメだと何故かよくわからない思考からレアチーズケーキを頼んだことを、おいしそうにパフェを食べる奈緒を見て少し後悔していた。


 チーズケーキに物足りなさを感じながら奈緒が食べるパフェを見ているとき、常に笑顔だった奈緒の顔つきが変わったことに気づいた。

 奈緒が一度、咳払いをして「でさ・・・」と話を切り出す。

 「結局話したいことがあるって何のこと?」


 それまでの和やかな雰囲気を少しの緊張感が二人を包んでいくことを健人は感じた。奈緒の表情が真剣になるのを見て、健人は少し怖気づく。


 「ああ。そうそう。実は奈緒に話したいことがあったんだよね」健人は不意をつかれたことで動揺したためか、今初めて話したいことがあると宣言したような話し方になってしまった。


 「うん。知ってる。」とすかさず奈緒からツッコミが入る。


 いざ、本人を目の前にすると恥ずかしさが圧倒的に上回り、健人の思考が一旦停止し、数秒間沈黙の時間となった。今まで耳に入らなかったBGMがこの沈黙の間だけ、異様に健人の邪魔をするかのように耳に入る。


 「まあ。つまりだな・・・。俺好きな人ができちゃったんだよね。」と、健人は奈緒の目を見れずに、テーブルの上に置いている奈緒の手を見ながら言う。もっと改まった口調になるかと思ったけど、意外にフランクに言っちゃったなと健人は思った。


 健人はすかさず奈緒の反応を見ようと、顔を上げた。どんな反応をしているのだろうか、お前には無理だとか言われるのではないかと不安に思っていたが、奈緒の表情は意外にも穏やかな表情だった。奈緒は穏やかな表情を変えずにふーんと相槌を打つ。


 「で、誰が好きなの?私が知っている人?」と奈緒が健人に質問する。ああ、そういえば好きな人の名前を言ってなかったと健人は思った。


 「・・・高木麻衣さん。俺と同じA組の。」


 健人がそう言った瞬間、奈緒の表情が変わった。驚いた表情というか虚を突かれたような表情だった。思わずと奈緒の口から「ええ!?」と声が漏れる。


 「健人、高木さんのことが好きなの?それはどのくらい?言っとくけどあの子別のクラスでも話題になるほどの人気者じゃん。恐らく男はみんなあの子のこと好きだと思うよ。」


 「いや、これは本当に付き合いたいほど好きなんだ。憧れとか付き合えたらいいなーていうレベルじゃなくて。」


 健人がそう言うと、奈緒の表情が一気に緩み、盛大に笑い始めた。


 「あっはっはっは!まさか超草食系の健人が本気で高木さん狙っているとは!やっと一丁前に好きな子ができたかと思えばいきなり高木さんとかハードル高すぎでしょ!」


 「うっせ!俺は本気になったらトコトン貫くぞ!絶対麻衣さんとお近づきになってやる!」


 「そっか。まあ青春男よ頑張りたまえ!恐らく無理だろうけど。撃沈するのも青春のうちだ。」奈緒はここぞとばかりに健人をいじりだす。


 奈緒に一通りいじられる健人だったが、第一関門を突破したことに安堵していおり、何を言われても達成感しかなかった。


 「あー笑った。高木さんのことを本気で狙うなんてやっぱり信じられないわ。」奈緒はそう言いながら、残ったパフェを食べ終わる。

 「で、これからどうアプローチしていくのよ?」

 「えっ?」

 「だってこれから本気だすんでしょ?高木さんめっちゃ人気あるからうかうかしてたら他の男子に取られちゃうよ。」


 確かに早く手を打たないと麻衣さんに彼氏ができる可能性もある。しかも春休み中だし、アプローチするとしたら連絡して何かしら口実作って誘い出すしかないと健人は思った。


 「いや、付き合うまでに絶対に超えないといけない壁だし、頑張るよ!」と健人は答えたが、「それじゃ健人はすぐ諦めると思うよ。」と一蹴された。


 「いやいや、今回は本気だってさっきも言ったじゃん。」と返した途端、

 「私、協力してあげようか!」と、唐突に奈緒が言った。健人は、そう来ると思っておらず、「えっ?」としか返すことができなかった。


 「私と同じテニス部の友達が高木さんと仲良いから、そこからお近づきになれると思うんだよね。私もその友達伝いで高木さんと遊んだこともあるし、いいと思うんだけどなあ。」と、奈緒はまるでセールスマンのようにアピールしてくる。


 「確かにそれはありがたい。でもなんでそんなに俺に協力してくれるん?」


 「健人の好きな人知ってるの私だけだし、運命共同体てことで!」


 なんで私だけってなるんだ、と健人は思ったが、そこは間違えていないため、ツッコミは入れなかった。

 先ほどの話を聞く限り、奈緒と麻衣さんは面識あるらしいし、いきなり二人で会うよりは何人かで遊ぶところから始めるほうが自然だなと健人は思った。ホント、おまじないの話抜きにしても、ここで話しといてよかった、と健人はホッとする。


 「サンキューな。じゃあ協力頼むわ。」


 「ちょっと、せっかく健人のお願いを受け入れてあげるんだからもうちょっと嬉しそうにしなさいよ。」


 「かたじけない。」


 「侍か!まあ良しとしよう!」奈緒は笑いながらそう答える。


 健人は一通りのやり取りを終えた後、目標も達成したしそろそろ帰ろうかなと思い、スマホの時計を見た。時刻は17時前。こんな時間喋っていたのかと、改めて奈緒といる時間の過ぎるスピードに驚く。


 「もういい時間だし、そろそろ帰ろうか。」健人がそう言い、伝票を持って椅子から立ち上がろうとしたとき、


 「ねえ。さっき協力するって言ったけど、やっぱ待って!条件つけるわ。」


 「ん?条件?」奢ってとか言われるのかなと健人は思ったが、予想とははるかに違う答えが返ってきた。


 「二人の様子をこれから観察させてほしいの。」


 「ったく、観察させてほしいってどういうことだ?」

 健人は奈緒と別れ、すっかり暗くなった夜道を一人帰りながらそうつぶやく。

 お互い家までの最寄り駅が同じため、健人は何度も奈緒に観察の意味を聞いたが、「特に意味はないよ!ただ観察したいだけ」と笑って答えるばかりだった。


 健人にとっては、随分と引っかかる内容だが、協力してくれることは正直ありがたかった。いきなり麻衣さんを誘って二人きりで遊ぶなんて、学校のほとんどの男子生徒を敵に回すようなものだからだ。

 しかし、健人にとってはおまじないその1をクリアしたことになり、目的は達成したため、条件のことは家に帰り着いたころには深刻に考え込むことはなくなっていた。ご機嫌に自分の部屋に戻る。

 さて、お待ちかねのおまじないその2を見るぞと思いながら、HP上の「おまじないその1をクリアした君はその2を見てね☆」と書いた文字をクリックした。興奮と少々の緊張感をもって次のページが開くことを待つ。


 『あなたの片思いを叶えます!恋を成就させる7つのおまじない!その2」

 県内で一番大きな神社へ行き、好きな異性と二人きりで参拝をする!但し、自分、好きな異性、おまじないその1でカミングアウトした最も親しい異性の3人で神社に行くこと!


 ・・・なんだこのおまじない!

 健人は純粋に心の中でそうツッコんでしまう。

 毎回ながらこのおまじないには驚かされてばかりだ。

 健人が住んでいる県内で一番大きい神社といえば保野下(ほのもと)神社だ。そこは運悪く、健人の住んでいる地元からはかなり遠い場所にある。いや、人目を気にしがちな健人にとっては運良くなのかもしれないが。


 健人は一度気持ちを整理して、もう一度その2のおまじないを読み直す。

 保野下神社に行って二人きりで参拝をする。そこは何かカップルっぽい。そこは分かる。だが、参拝は二人きりでも一緒に行くのは3人。その1でカミングアウトした異性を入れて3人。同性の友人ではダメ。もちろん同性の友人を含めて4人もNG。

 健人は冷静に噛み砕きながら現状を把握した結果、一つの結論に至った。

 ・・・協力をお願いして良かった。


 正に結果オーライである。もしあの時、奈緒の協力要請を断固拒否していたら、さすがにお願いしづらくなるところだった。恥を忍んでお願いしたとしても、恐らく3000円分くらいのケーキを奢らなくてはならなかったかもしれない。いや、奈緒のことだから1000円くらいで協力してくれるかもな。と健人は協力拒否した場合のシミュレーションをしていた。



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