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「さっさと私が殺っちゃいましたよ」


「約束と違うじゃん」



エリカの言葉に、リリーは口を尖らせて抗議をした。



「最後の止めは私が刺しましたけど、拷問の方が殺すよりも残酷ですから、リリーが殺したのと似たようなモノですよ?」


「確かにそうかも知れないけれどさ、なんとなく達成感が無いというのか……」


「主よ、その考え方は快楽殺人鬼と同じなのじゃ」



最後の止めをエリカに掻っ攫れたリリーは、なおも不満を口にするのであったが、その不満の言葉はクリスによって一刀両断された。



「クリスの言う通りですよ」


「いや、快楽殺人者と同じには成りたくは無いし、一緒にしてもらっても困るんだけど」



クリスとエリカに指摘されて、リリーは"ブルックリンの吸血鬼"を思い出し、眉を下げて情けない表情になった。



「殺しに達成感など要りません。 機械的に殺すのが一番ですから」


「13型トラクターの人みたいに?」



感情に囚われると見えるものも見えなくなる。 明鏡止水は大袈裟であろうが、それに似た境地でないと、一般人の場合は戦場で生き残れる確率は低くなるのだ。

チートな能力を備えているリリーたちには、当て嵌まらない問題ではあるが。



「そういう事ですね。 さて、残りの敵は精霊たちに任せて、私たちは帰りましょうか?」


「我は眠いのじゃ」



リリーの言葉を肯定して、エリカは帰宅を促すのだった。 クリスは欠伸をしながら目を擦った。 男装の麗人も形無しである。



「この子はどうするの?」



リリーは、いまだに眠っている兎人の少女を見遣ってエリカに尋ねた。



「そうですね…… ちょうど店番も欲しかったことですし、辛い記憶を消してあげてから、連れて帰りますか?」



リリーの問い掛けに、顎に手をやり一瞬だけ思案したエリカは、兎人の少女マルガリータの双丘の突起を貫いているリングを外して、治療を始めた。



「ミドルヒール」



そう言ったエリカの手から淡い色をした光が緩やかに放たれ、その光が優しく少女の身体を包み込み、みるみるうちに少女の身体にあった痣や傷が消えていった。



「記憶スキャン開始……」


「どうせ記憶を消すなら、マルガリータって言い難いから、いっそのこと名前も変えてあげて、マリーにしちゃったらどうかな? 辛い過去との決別というか、生まれ変わるって意味でもさ」



マルガリータの額に手を当てていたエリカに対して、リリーはマルガリータの改名を提案するのであった。 理由が言い難いからという、思い切り自己都合が入ってはいるのだが。



「リリーは優しいのですね。 多少傲慢かも知れませんけれども、良い案だと思います」


「エリカが私は多少傲慢でも良いって言ってくれたんだよ?」


「そうでしたね。 では、そうしましょうか」



リリーの言葉にニッコリと微笑んだエリカは、そのまま、スキル【改竄】を開始した。 エリカの手が紫色に怪しげに輝いている。



「記憶改竄開始……」






「改竄完了」


「どうなったの?」



外見的にはマリーの身体に変化は見られないので、リリーは不安そうにエリカに尋ねた。



「彼女、マリーは、私たちとは前からの知り合いで、リリー商会を手伝っているという設定にしました」


「改竄って悪いイメージでしか語られることがなかった気がするけど、こうやって、人助けにもなるんだね」



リリーの問いにエリカは、マリーの記憶改竄の内容を簡潔に説明して、それにリリーは安堵の笑みを浮かべるのであった。



「今回はイレギュラーで特別ですけどね。 もっとも、良い意味で使われることがないのには同意します」



そう言ってエリカは、アイテムボックスから浴衣を取り出して、手際よくマリーに着せた。



「奴隷にされていた獣人たちの処遇はどうしよっか?」


「解放して、今日から自由だ! それでは無責任ですね」


「エリカの下位精霊にでも、落ち着くまで面倒をみさせたらいいのじゃ」



マリー以外で奴隷にされている獣人たちが、解放された後のことを心配してリリーは尋ねたのに、エリカは思案し、それを見て取ったクリスが助け船を出した。



「そうですね。 では、そうしましょうか」


「なるべくなら、里に帰るなり、里が無いのならウィンザー領にでも移住してくれた方が、ここでの軋轢が無くて助かるかな?」


「ここに居るよりはマシでしょうけれども、奴隷の数が余りにも人数が多かったら、今度は移住した先のウィンザー領で軋轢が起こるかも知れません」



クリスの提案にエリカは頷き、リリーは普人至上主義が蔓延している、この土地よりも移住した方が良いのでは?と言ったのだが、それにエリカが疑念を呈したのだ。



「一難去ってまた一難か、まるで流浪の民みたいだな……」



リリーは、ヨーロッパで迫害され追われ、約束の地に辿り着いてからは、先住者との諍いばかり起こしている民を想像したのだった。



「モサドがリリーを監視対象にしました。 この監視の目から逃れることは不可能に近いでしょう」


「ちょ、それシャレにならないから! 本当に異世界まで追ってきそうだよ」



キラリと目を光らせ口角を上げて言うエリカに、リリーは半ば本気で慌てた。 モサド怖いです。



「ふふ、そしたら十戒でもやってみせてあげれば良いのですよ」


「あー、紅海が割れるってヤツね」



モーセの十戒。 もしこれが本当ならば、この行為を行った者は地球における異世界人であろう。 世の中には、まだまだ現代科学では解明出来ない謎も多いのかも知れない。



「冗談はこれぐらいにして、今度こそお家に帰りましょうかね」


「そうだね。 今日は色々な事があって私も疲れたかな」



エリカはマリーを抱きかかえて二人を促し、それにリリーも自分の肩を揉みながら同意した。



「では、皆の衆は我の背中に乗るのじゃー」



そう言ったクリスは、窓から飛び降りて銀の神龍の姿になった。






こうして、エリカによってマーロ教国各地に放たれた精霊達は、一晩でマーロ教国の主要な人物を全て謎の死を遂げさせ、神殿と教会を破壊しつくし、戦場に在った神聖騎士団は突如として現れた精霊達に虐殺されて戦線は崩壊した。 混乱し動揺した一般の兵士達は、我先にとウィンザー王国に降伏した。 残された人々は、教団関係者の全員が死亡したことに、神の祟りと恐怖して次々とマーロ教の教えを放棄していったのである。


国としての機能の失ったマーロ教国は、その半月後に滅亡した。 人々はマーロ教国が神の逆鱗に触れたと恐怖したのであった。






リリーホームにて~




「ポーション作りすぎちゃったね」


「アイテムボックスに入れておけば腐るモノでもありませんし、当分の間は作らずに済むと前向きに考えましょう」


「最終的には二十五万人を殺したんだけど、ピンとこないね? まさに、統計上の数字って言葉がピッタリだよね」


「そうですね、リリーが直接に手を下したわけではありませんし、死体の山を見たわけでもありませんからね」


「ヒトラーやスターリンも、こんな感覚だったのかな?」


「どうなんでしょうね? 本人たちから直接聞いてみない事には、なんとも言えませんね」


「まあ、殺された人たちには、多少は申し訳なく思うけど、ハージマリの町が脅威に晒されなくて良かったってことで、一件落着だね」


「はい、邪教も滅んでビールが美味しいです。 やっぱり平和が一番ですよね」


「どの口が言うのかって怨嗟の念が聞こえてきそうだな」


「この口ですね。 そんな怨嗟の念など、聞こえたとしても馬の耳に念仏です」


「うん、いろいろな意味でも、エリカに勝てる人は存在しない気がする」


「リリーを除いては、ですけどね」


「マーロ教国の跡地はどうなるのかな?」


「クララが言ってましたけど、マーロ自治連合って名前でウィンザー王国の自治領になるみたいですよ?」


「自治領? 貴族の領地にならないんだ」


「この戦争では、たいした手柄も立てることができませんでしたからね、かといって、建前上は王家の直轄領にするのも拙いらしくて、自治領に落ち着くみたいです。 まあ、実質的には王国の直轄領みたいなものですけどね」


「なるほど、ところで、さっきからなんで私はエリカに後ろから抱きかかえられてるの?」


「ふふ、なんでですかね?」


「て、手つきが徐々にいやらしくなっているのですけど……」


「サービスですよ、サービス♪」


「誰に対してのサービスなのよ、あんっ♡」


「当然それはリリーに対してに決まってますよ?」


「それはそうなんだけれ、んっ♡ そこ弱いのダメ~」


「最近は開発されてきて、敏感になってきましたね?」


「そ、そんなこと、あっ♡ るかも、エ、エリカだけいつも攻めてズルいんっ♡ わよ」


「それもそうですね、でも、リリーに私を導かせることができるかしら♪」


「失礼ね、わらべのみことじゃないんだから出来るわよ。 こう見えてもゴッドフィンガーだったんだから」


「いまは文字通りのゴッドフィンガーですけどね」


「誰が上手いことをって事実、私の手は神の手だったわ……」




自粛中、想像力を発揮してお楽しみください。





「はぁはぁはぁ、こんなの初めての経験でした…… リリーの前世は絶対に犬でしたね」


「いや、人間の男だったし。 でも、エリカってあんな風に乱れるのね~ いい発見したわ、これで主導権を取り戻せたし♪」



顔を紅潮させ息を切らしているエリカに対して、リリーは小悪魔的な笑みを浮かべて満足するのであった。











魔界~






「ああ、妾の愛しの我が子、ケルベロスは何処に消えたのじゃ! 草の根を分けても探し出すのじゃ!」


「「「「御意!」」」」



鬼子母神のような形相で怒り狂う、その姿は、下半身が龍とも大蛇とも言える鱗に炎を纏った美女であった。 その美女の背中には純白の大翼が羽ばたいていた。




第一部 ─ 完 ─




これにて、エターナルアース第一部は完結になります。


初めて小説を書き始めてから二ヶ月弱、なろうにアップし始めて一ヶ月。会話文は書ける時はサクサク進みました。が、途中から真面目に地の文を入れだしたら、悪戦苦闘、書いては消しの繰り返しで試行錯誤しました。

見直したら、小説の前半部分は特に酷いですね(;´∀`)

そうのうち改稿するかも? 黒歴史として残す可能性も……

小説を書くのは難しいです。なめてました><


最後まで私の拙い素人小説を読んで頂きありがとうございました。


では、また第二部でお会いしましょう。


続きは、ここに継ぎ足した方がいいのかな? まだ、5KBしか書けてないってどういうことよ……

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かった。神転生はやっぱり新鮮だね
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