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「ふーん、へー ほー、それで、ペドの鬼畜野郎が言いたいことは、それだけ?」



リリーはマルガリータをチラリと見て眉を顰めそうになったが、それを表には出さずにポーカーフェイスを作って教皇に最後通牒を突きつけた。



「ま、待て! この娘がどうなってもいいのか!」



そう言って教皇は、眠らされているマルガリータの半身を起して首に隠し持っていた短剣を突き立てた。 パサリと白いシーツが落ちて兎人の少女の上半身が露わになる。

その膨らみかけた双丘の先端部には、リングが装着されチェーンで両方のリングが繋がっていた。



「下種のやりそうな事だな。 貴様に出来るのなら煮るなり焼くなり好きにすればいいさ、出来るのならば。 それに、その兎人の娘は私の知り合いでも何でも無いし。 知ってる? 人質って利用価値が無ければ、人質の体をなさないって? その娘を貴様が殺したら次は貴様の番だ」


「この子を殺さなくても教皇の死は確定事項ですけどね。 こんなに玩具にされて可哀想に……」



ボディピアスまでは想像していなかったリリーは、今度こそ顔を顰めて殺気を教皇へと向けた。 エリカは、リリーの殺気によって硬直して動けなくなった教皇から短剣を取り上げ、マルガリータを抱き上げてベットの端へと寝かし直したのであった。



「あぅあぅ」


「ねえ、エリカ、前言撤回してもいい?」



自分の身体が動けなくなったのを自覚した教皇は、冷や汗を流して口を金魚のようにパクパクさせるのだった。 リリーは教皇を睨め付けたままエリカに問い掛けた。



「前言とは?」


「私が、こいつを殺したいってこと」



エリカが少女を抱き上げた時にリリーは見てしまったのだ。 少女の身体に無数に残る痣と脚の腱が斬られている姿を。



「仕方ありませんね。 でも、私も参加させて下さいね? アッサリと殺すのでは生緩いぐらいに、この馬鹿は少々やり過ぎたようですので」



リリーの答えに了承の返事をしたエリカではあったが、エリカ自身もマルガリータを抱きかかえた時に彼女の思念が流れ込んできて、顔にこそ出さなかったが、内心は怒り心頭で怒髪天を衝いていたのである。

言葉では言い表せれない程の少女の苦痛と悲しみが……



「そうみたいだね。 ジワジワと嬲り殺しにしても足りないぐらいだね」



そう言ってリリーは、教皇の右手首を掴んで小指の爪を剥がした。



「うぎゃー!」


「我はゆるりと見物させてもらうのじゃ」



悲鳴を上げた教皇を尻目にクリスは、アイテムボックスから取り出したオレンジジュースを美味そうに啜った。



「では、次は私が」



リリーに続いて今度は、エリカが反対の小指の爪を剥がすのだった。



「うげー! ざ、財産は全部やるから、た、助けてくれ!」


「この期に及んで、まだ命乞いをするとは見苦しい。 ねえ、いまどんな気持ち? 自分たちが見下し蔑んできた亜人に嬲られるのは、どんな気持ちかな?」



リリーは意地の悪い、ゾッとするような酷薄な笑みを浮かべて教皇に問うたのであった。



「こ、こんな事になるのなら、そこにいる兎人をもっと弄っておけばよかったわい…… うひひひ、あの娘は良かったぞ。 蕾の頃から余が仕込んだのだからな! いまでは、娼婦顔負けの淫乱娘じゃぞ? 亜人なぞ、マーロ神の代理人たる余の玩具にしか過ぎんのだ!」


「それで、そのマーロ神とやらは何処に居るのかな? 勝手に神の代理を僭称する貴様には、神が直々に天罰を下してあげよう。 感謝して地獄に墜ちるがよい」



リリーの眼光に当てられた教皇は、どこか壊れたのか、過去を思い出して下卑た笑みを浮かべた。 それを見たリリーは、スッと目を細めて底冷えのする声で告げた。



「ふん、貴様のような小娘が神だとでも言うのか? 片腹痛いわ!」


「ほう。 では、その目に神の姿を焼き付けるがよい。 顕現!」



完全に開き直った教皇は、リリーの言葉を馬鹿にしてせせら笑ったのだが、それにカチンときたリリーは、顕現と叫んでいたのだ。


そして現れたのは、金色のエフェクトを纏った、体高三メートル弱、鼻先から尻尾の先まで十メートルはあろう金色の九尾の大狐であった。



「き、狐の化け物……」


「あら、失敗しちゃった。 とういか、この部屋狭いです」



変身したリリーを見た教皇は恐怖の余り失禁した。 それを意に介さずにリリーは部屋が狭いと、のたまったのである。 此処が宮殿ではなかったのならば、完全に建物を壊す大きさなのだ。



「リリーの顕現でのデフォルトは、その姿みたいですね。 自分の成りたい姿をイメージしないで顕現するからですよ」


「主の真の姿を初めて見たのじゃ! 凛々しいのう」



考えなしに変身したリリーに対して、エリカは若干呆れ軽く息を吐きながら指摘をし、クリスは九尾の狐姿のリリーを見て喜びはしゃいだ。



「そう? 褒められるとやっぱ照れるね。 では、あらためて、顕現!」



再度、リリーが顕現と唱えた後に現れたのは、これもまた、金色のエフェクトを纏ったヴィーナスもため息を吐く程の絶世の美女であった。 緋色の巫女姿のリリーの背中には、八翼の翼が靡いている。



「は、八枚の翼……だ……と!?」



リリーの八翼の翼を見た教皇は恐れ怯えた。 マーロ教では八翼を持つ者は最上位者、すなわち神以外には存在しないのである。 リリーの翼は、ただのアバターの八翼大天使の翼に過ぎないのだが、それを知らない教皇は、リリーこそが神に見えるのだろう。



「ふふふっ、ふはははー! 崇め奉れ! 怯えろ! 竦め! 跪け! なにも出来ぬまま死ぬがよい!」


「調子に乗りすぎですよ」



腕を組み胸を反らして教皇を恫喝するリリーに、エリカが呆れながら突っ込みをいれた。



「だって、せっかく変身したんだから、格好良いこと言ってみたいじゃん!」


「そのセリフで全て台無しですけどね。 それよりも、さっさと拷問の続きをしますよ」


「これじゃあ、せっかく変身した意味がないじゃん…… ぶつぶつぶつ」



エリカの突っ込みに対して、口角泡を飛ばして反論するリリーであったが、エリカに軽く往なされ、リリーは、ぶつくさと文句を垂れるのだった。



「こうなったら、貴様に八つ当たりしてやる!」



八つ当たり気味にリリーがパチンと指を鳴らすと、教皇の爪が一枚剥がれ落ちた。



「うぎゃ!」



先ほどまでの痛みより強い、あまりの痛さに教皇は白目を剥き、口から泡を吹いて気絶してしまった。



「こんな程度で気絶してもらったら困りますね。 まだ爪は17枚と指は20本残ってますよ? プチヒール」



そう言ってエリカは部分回復をするヒールを教皇に掛け、その後に指の爪を剥がした。 そして、それを延々と繰り返した。 この拷問は痛みが和らいだ後に、また痛みが襲ってくるので、拷問を受けている側からすれば地獄のような時間であろう。



「うげっ!」


「プチヒール」


「ごぎゃ!」


「プチヒール」


「ぐえっ!」


「プチヒール」


「あがっ!」


「プチヒール」


「ぶほっ!」


「メキシコのマフィアも顔負けの残虐な行為って、こういうのを言うのかな?」



いつか見たメキシコの麻薬抗争での惨劇の画像や動画を思い出して、それと比べるようにしながら、リリーは言った。



「リリーと私の所業は、イスラム過激派や人民解放軍とかも真っ青かも知れませんね」


「うん、それに比べたら、ギロチンが如何に人道的な処刑方法だったのか理解できるよね」



エリカは自分たちの行いが、えげつない行為と自覚して自嘲気味に笑い、リリーは一撃で首を落として死に至らしめるギロチンの方がマシだと、ほくそ笑んだ。



「こ、殺せ、頼むから殺してくれ……」



脂汗を流し苦痛に顔を歪ませながら、この拷問から解放されるのならばと教皇は、ついに殺してくれと哀願するのであった。



「ふわ~ 我はそろそろ飽きてきたのじゃ」


「それもそうですね。 時間も時間ですし、そろそろ終わりにしましょうか?」



クリスは欠伸をして、さっさと終わらせろと暗に催促して、エリカもそれに同意をした。 そして、リリーはというと、



「目ん玉くり抜くとか、顔面の皮を剥ぐのは、流石にグロテスク過ぎるから自重するにしても、まだ達磨が残っていたね。 けど、タイムオーバーみたいだね」



少し物足りないとでも言うように残念がった。



「達磨なんて誰得なんですか?」


「変態的性癖の人たち御用達かな?」



エリカの問いにリリーは首を傾げながら、三日目の同人誌等を思い浮かべて答えるのだった。 あれは、二次元の美少女だからこそ、まだ絵になるのだということにリリーは気が付いていないのである。



「ジジイの達磨など誰も喜びませんよ。 そんなことより、ちゃっちゃと塵も残さず消し飛ばして終わらせましょう。 アイス、ハンマー、フレイムヘル」



そう言ってエリカは、アイスと唱えて教皇を氷漬けにし、それから地魔法のハンマーで砕きバラバラにしてから、火炎地獄で塵すら残さず教皇を消滅させたのであった。



「あーうー 私の出番が無かった……」


「リリーがお馬鹿なことを言って時間を浪費しているから、さっさと私が殺っちゃいましたよ」



教皇の姿が跡形もなく消え去ったのを見て取ったリリーは、マヌケ面であんぐりと口を開いた。 あくまでも、汚れ役は従者の勤めと考えるエリカは、これで良かったのだと、胸を撫で下ろすのだった。




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